白樺 (鉄道車両)

鉄道車両「白樺」

「白樺」は、かつて日本国有鉄道（国鉄）およびその後継である東日本旅客鉄道（JR東日本）が所有していた、特別な仕様の鉄道車両です。1983年（昭和58年）から1996年（平成8年）にかけて運用されたこの車両は、団体旅行などの観光目的で利用されることの多かった「ジョイフルトレイン」と呼ばれる列車の一種でした。

誕生と特徴

「白樺」は、1983年に国鉄長野鉄道管理局が企画し、長野工場で既存の12系客車を改造して製造されました。これは、1980年（昭和55年）に門司鉄道管理局が初めて12系を改造してお座敷列車を導入して以来、各地で展開されていた12系改造の和式客車（お座敷客車）シリーズのうち、10番目に登場した編成にあたります。

この車両の大きな特徴の一つは、各車両に固有の愛称が付けられていたことです。これらの愛称は、主に長野県をはじめとする中部地方各県の県花にちなんで名付けられていました。

編成と愛称

「白樺」編成は、全て12系客車からの改造車で構成される6両編成でした。編成の両端に位置する車両はスロフ12形800番台、中間車両はオロ12形800番台という形式が付与されており、全車両がグリーン車扱いとなっていました。

以下に、各車両の愛称、形式、定員、および改造前の形式を示します。

1号車：「すいせん」 - スロフ12 819 （旧スハフ12 82） 定員44名
2号車：「つつじ」 - オロ12 837 （旧オハ12 280） 定員46名
3号車：「かきつばた」 - オロ12 838 （旧オハ12 281） 定員46名
4号車：「れんげ」 - オロ12 839 （旧オハ12 282） 定員46名
5号車：「くろゆり」 - オロ12 840 （旧オハ12 283） 定員46名
6号車：「りんどう」 - スロフ12 820 （旧スハフ12 83） 定員44名

車体構造と外観

車体構造としては、スロフ12形では乗務員室側の窓4つが固定窓に変更され、編成端の貫通扉にはテールサインが設置されていました。一方、オロ12形では、乗降用の出入口がトイレ設備のある側の片側1か所のみとされました。

外観上の最大の特徴は、それまでの12系改造和式客車とは一線を画した、完全にオリジナルの外部塗装が採用されたことです。当時の12系改造車は、元の塗装をそのまま利用するか、帯の色を変える程度のものが多かった中で、「白樺」は車体全体の色が変更されました。初期の塗装は、車体全体がクリーム色（クリーム10号）、窓周りと車体下部が黄緑色（黄緑6号）という配色で、これは長野県の山々の夏と冬の風景をイメージしたデザインとされました。

この塗装は、国鉄民営化を控えた1986年（昭和61年）夏に、窓周りと車体裾の緑色がより深い緑色（緑14号）に変更されています。さらに、JR化後の1987年（昭和62年）8月に行われた大規模なリニューアルでは、外部塗装が大きく変更され、全体をモスグリーンとし、窓の上下に赤色・金色、黒色・金色の帯が入るデザインとなりました。

車内設備

「白樺」の車内は、お座敷構造の和室が主体でしたが、スロフ12形には乗務員室側の固定窓部分にリクライニングシートを備えた洋間も設けられており、和洋折衷の構成でした。

1987年のリニューアルでは、車内設備も大幅にグレードアップされました。スロフ車の洋間はより豪華な内装に改装され、ソファやシャンデリアが設置されました。また、各車両にはカラオケ設備（レーザーカラオケ）や大型冷蔵庫などが備え付けられ、団体旅行の利用客が快適に過ごせるような配慮がなされました。

運用と引退

「白樺」編成は、長野運転所（現：長野総合車両センター）に配置され、主に長野県を中心としたエリアで団体臨時列車として運用されました。特別な行事や旅行会社のツアーなどで利用され、多くの人々に親しまれました。

1995年（平成7年）には、本編成の後継として、より新しい14系客車を改造したジョイフルトレイン「浪漫」が登場しました。「浪漫」への置き換えが進められ、老朽化も進んだ「白樺」は、翌1996年（平成8年）3月をもって運用を終了し、廃車となりました。

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