白簱史朗

白簱史朗（しらはた しろう）は、1933年2月23日に山梨県で生まれ、2019年11月30日に86歳で亡くなった、日本の著名な山岳写真家です。

生い立ちと写真家への道

幼少期を山に囲まれた環境で過ごし、その自然への愛着が写真家としての原点となりました。中学校卒業後は家庭の事情で進学を断念しましたが、1951年に父親に写真家を志すことを打ち明け、写真家・岡田紅陽に師事することになります。

5年間の内弟子修行中は、自主的な山行は故郷周辺の低山に限られていましたが、岡田紅陽の荷物持ちとして富士山に登った際、南アルプスの壮大な景色に魅せられ、山岳写真を生涯の職業にすることを決意しました。その後、赤抜沢の頭から北岳を眺めた際に、山と共に生きる決心を固めたと言われています。

フリーランスとしての活動

1958年に独立しフリーランスの写真家として活動を開始しましたが、対人関係が苦手で苦労し、何度も職を変えるなど、安定しない時期を過ごしました。しかし、1961年に『山と溪谷』にカラー写真が掲載されたことや、写真展への出展をきっかけに、徐々に山岳写真家としての地位を確立していきます。

1962年からは、金銭的・時間的な制約が許す限り精力的に山へ入り、多い年には年間200日以上も山で過ごしました。その中で、中央アルプス縦走中に生涯の伴侶となる女性と出会い、1965年に結婚。結婚資金で購入したカメラ機材は、彼の写真家としての活動を支える重要な道具となりました。

山岳写真家としての功績

白簱史朗は、日本の山岳写真界を代表する写真家の一人として、国内外の山々を撮影しました。特に南アルプスをライフワークとして捉え、その四季折々の美しい姿を写真に収めました。また、1966年にはコー・イ・セフェに初登頂、1976年にはソ連のコミュニズム峰（現イスモイル・ソモニ峰）に登頂するなど、海外の山々でも精力的に活動しました。1968年には日本山岳写真集団を創設し、後進の育成にも尽力しました。

彼の写真は、単に美しい風景を記録するだけでなく、自然への深い愛情と畏敬の念、そして山で生きる人々の姿を写し出している点が評価されています。また、長年にわたり雑誌『山と溪谷』に掲載された「白簱史朗の人生相談」は、ユーモア溢れる語り口で多くの読者に親しまれました。

その他の活動と晩年

白簱史朗は、日本高山植物保護協会会長、山岳写真の会「白い峰」会長、日本山岳会終身会員、日本写真家協会会員など、数々の要職を歴任しました。また、山梨県早川町には、彼の業績を記念した「南アルプス山岳写真館・白簱史朗記念館」が開設されています。

晩年は、写真フィルムの紛失問題に巻き込まれるなど不運に見舞われましたが、2019年11月30日に腎不全のため亡くなるまで、写真家としての情熱を失うことはありませんでした。

主な作品集

白簱史朗は、数多くの写真集を出版しました。

『南アルプス』（朝日新聞社 1970年）
『写真集　白簱史郎　富士山』 （山梨日日新聞社 1999年）
『北アルプス礼讃白簱史朗写真集』（新日本出版社 2001年）
『白簱史朗の百一名山』 （山と溪谷社 2001年）
『富士山風光200景』（日本カメラ社 2003年）
『日本と世界の名峰を讃う』（日本カメラ社 2003年）
『山、わが生きる力』（新日本出版社 2003年）
『富士四季讃歌』（朝日新聞社 2005年）
『白籏史朗の甲斐山歌』（新日本出版社 2008年）
『富士百景』（山と渓谷社、2009年）
『圏谷のシンフォニー　北アルプス・穂高涸沢』（山と渓谷社、2009年）
『名峰・日本縦断　白籏史朗写真集』（新日本出版社、2013年）

これらの作品集は、彼の山に対する愛情と、写真家としての卓越した技術を今に伝えています。

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