白菊 (航空機)

白菊（しらぎく）

概要

白菊は、日本海軍が第二次世界大戦中期に使用した機上作業練習機の一つであり、機体略番はK11Wです。この機体は、九〇式機上作業練習機の後継として1942年に制式採用され、終戦まで運用されました。特に戦争末期には特攻機としても利用され、運用の幅広さが特徴です。

開発の経緯

機上作業練習機は、艦上攻撃機や艦上爆撃機、さらには観測機などに搭乗する、操縦士以外の乗員のための訓練を目的としています。日本海軍では、これらの役割を担う乗員は「偵察員」と呼ばれ、操縦士と同数以上の人員が必要でした。初代の九〇式機上作業練習機は昭和6年から用いられましたが、太平洋戦争の進展に伴い、その性能に対する不満が高まりました。

このため、1941年に海軍は渡辺鉄工所（後の九州飛行機）に新たな機体の開発を依頼しました。その結果、1942年には試作機が完成し、全金属製モノコック構造の胴体と固定式の主脚を備えた設計となっています。教官と3名の練習生を搭乗させることが可能で、訓練内容に応じて座席配置が変更できる柔軟性も持ちます。

運用実績

白菊は、安定性や操縦性、さらには機内スペースの広さから、多くの練習航空隊に配備され、戦争の終息まで活躍を続けました。また、対潜哨戒や近距離輸送、通信任務にも使用されており、非常に汎用性の高い機体として知られていました。

燃料としては「八〇丙」というオクタン価80のアルコール燃料を使用。終戦前には特攻機に改修され、色も練習機のシンボルカラーから迷彩色に変更され、沖縄戦へ出撃しました。製造された機数は798機に達し、終戦時点で370機以上が残存していました。

特攻隊としての活動

1945年、全軍特攻が決定されると、白菊は特攻隊にも加えられることになりました。高知空や徳島空など、複数の航空基地から特攻隊が編成され、訓練が実施されました。しかし、この特攻のための改修には多くの問題があり、搭乗員はしばしば戸惑いを感じていました。

訓練は模擬爆弾を用い、夜間活動能力を高めるための厳しい内容でした。白菊の特攻は沖縄戦に投入され、初出撃は1945年5月24日に実施。この特攻の任務では、主に輸送艦を狙い、速度の遅さを補うために戦闘機や攻撃機の護衛を受けることが計画されました。

特攻中には多くの白菊が出撃し、一部は敵艦に突入しました。特に駆逐艦ドレクスラーには白菊が命中し、艦は損傷を受けたものの、搭乗員の活躍は戦果を挙げ、重い評価となりました。

結果と評価

白菊特攻隊は、戦争の終息までに多くの出撃を行い、数多くの艦船に対する損害を与えました。戦後、その運用は再評価されることになる一方で、多くの隊員が命を落としました。その中には自決を選んだ者もおり、戦争の悲劇を象徴するエピソードが刻まれていきます。

南海計画

白菊の汎用性を考慮し、その派生機として対潜哨戒機の「南海」という計画も立てられましたが、終戦によりこの計画は実現しませんでした。1945年1月に行われた飛行試験では胴体着陸の小破が記録されたものの、本機は正式には量産されませんでした。

スペック

• - 全幅: 14.98 m
• - 全長: 9.98 m
• - 全高: 3.10 m
• - 機体重量: 2,569 kg
• - エンジン: 日立 天風21型 空冷9気筒 515 hp
• - 最大速度: 230 km/h
• - 航続距離: 1,176 km
• - 武装: 7.7 mm機関銃 × 1、爆弾（60 kg × 2）
• - 乗員: 5名

白菊の歴史は、戦争の激しさと悲劇を物語っており、多くの人々の心に刻まれています。

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