白頭山密営

白頭山密営とは

白頭山密営（ペクトゥサンミリョン）は、北朝鮮が故・金正日総書記の「生誕地」と主張する史跡であり、朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）の重要なプロパガンダの場所となっています。所在地は両江道三池淵市に位置し、朝鮮民族の始祖とされる檀君も白頭山で生まれたという説話があることから、民族的な聖地としても扱われています。

北朝鮮の主張と実情

北朝鮮の公式な主張によれば、白頭山密営は初代最高指導者である金日成主席と妻の金正淑が率いた朝鮮人民革命軍の根拠地の一つとされています。そして、1942年2月16日に金正日がこの密営の中にある丸太小屋で誕生したとされています。しかし、この主張には異論があります。歴史的な資料や研究によれば、金正日の実際の誕生日は1941年2月16日であり、出生地も白頭山密営ではなく、ソビエト連邦極東のハバロフスク近郊であるという説が有力です。ソビエト側の記録もこの説を裏付けています。

白頭山密営の聖地化

1974年、金正日が金日成の後継者に決定すると、金日成は白頭山を訪れました。そこで、風光明媚な場所を選び、そこを金正日の生まれた白頭山密営の跡地であると発表し、背後の山を「正日峰（チョンイルボン）」と名付けました。この出来事から、白頭山の聖地化が本格的に進められることとなりました。1980年代後半には、金日成によって白頭山密営が「再発見」されたとされ、1987年には密営跡地に丸太小屋が「再建」されました。さらに翌1988年には、近くにある標高1,793メートルの山の名称を正式に「正日峰」と改められました。これらの動きは、金正日の権威を高め、後継者としての正当性を強調する意図があったと考えられています。

現在の状況

現在、白頭山の聖地化はさらに進められており、金正恩総書記も自らを「白頭血統」に属すると主張しています。これは、金一族の権威を強化し、支配体制を維持するための重要な要素となっています。白頭山密営は、北朝鮮の歴史や政治において重要な役割を果たしており、観光地としても多くの人々が訪れます。しかし、その歴史的な背景や真実については、様々な議論が存在していることも事実です。

参考情報

この情報を作成するにあたって、以下の文献を参考にしました。

李相哲『金正日と金正恩の正体』文藝春秋、2011年2月。

関連事項

正日峰
* 白頭山官邸

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