百済王氏

百済王氏：百済王族の系譜と日本における影響

百済王氏は、朝鮮半島にあった古代国家百済の最後の王である義慈王の血を引く子孫を祖とする、日本の氏族です。百済滅亡後、義慈王の王子である善光が日本に渡来し、持統天皇から「百済王」の氏姓を賜ったことが、この氏族の始まりとなります。「こにきし」という称号は、古代朝鮮における王を指す言葉で、古代朝鮮語に由来すると考えられています。

百済王氏の起源と興隆

百済王氏以外にも、「百済」を氏に持つ氏族（百済朝臣、百済公、百済連、百済宿禰など）が複数存在しましたが、百済王氏は、その名に示される通り、かつて百済王族の血統を受け継ぐ特殊な氏族でした。

『三国史記』によると、百済の建国に関わった朱蒙は卒本夫餘に娘を得て、温祚と沸流という二人の子をもうけました。そして百済滅亡後、義慈王は倭国（日本）との同盟関係を結び、王子豊璋と善光を日本に送りました。日本に残った善光が、百済王族の血統を日本で伝えることとなったのです。

当初、百済王氏の拠点が難波にあったとされますが、その後は現在の大阪府枚方市中宮に移り、百済王の祀廟と百済寺を建立しました。百済寺は中世に焼失しましたが、百済王神社は現在も同市に現存し、百済王氏の歴史を今に伝えています。

政治・文化への貢献と皇室との関係

奈良時代末期から平安時代初期にかけて、百済王氏は日本の政治・文化に大きく貢献しました。俊哲が陸奥守・鎮守将軍・征夷副使などに任命され、武鏡が出羽守となるなど、東北地方の経営や征夷事業に深く関わっていました。

特に平安時代初期には、桓武天皇の母が百済系渡来氏族の和氏出身であったことから、百済王氏は天皇の外戚とみなされ、特別な厚遇を受けました。一族の女性は桓武天皇や嵯峨天皇の後宮に入り、和気氏、伴氏、佐伯氏などとともに、天皇即位などの重要な儀式において氏爵を受け、従五位下の官人を輩出する慣例が確立されました。この慣例は、戦国時代まで続いたとされています。

百済王神社の旧神主家である三松氏は、百済王氏の末裔を自称していました。また、平安時代後期には常陸国で税所を預かる在庁官人の最高位にあった百済氏も、百済王氏の子孫であったと考えられています。

系譜と史料

百済王氏の詳細な系図は伝わっておらず、系譜関係が不明な人物も多いのが現状です。かつて『続群書類従』に「百済王氏系図」が収録されていたとされますが、現存していません。三松氏の系譜である『百済王三松氏系図』も存在しますが、その史料価値については異論があり、主要な辞典類では採用されていないケースが多いです。

しかしながら、百済王善光から続く百済王氏の血統は皇室を通じて現代にまで伝わっているとする系譜も存在し、百済王氏の歴史と影響は、日本の歴史に深く刻まれていると言えるでしょう。

著名な人物

百済王氏からは、多くの著名な人物が輩出されました。本文中には、飛鳥時代から平安時代後期までの多くの百済王氏の人物と、彼らの官職などが記されています。彼らは、政治、軍事、文化など様々な分野で活躍し、日本の歴史に貢献しました。

まとめ

百済王氏は、百済王族の血筋を受け継ぐ、日本における重要な渡来氏族でした。彼らは政治、軍事、文化の各分野で活躍し、皇室とも深い繋がりを持ちました。その歴史と影響は、現在もなお、百済王神社などの遺構や、残された史料を通じて、私たちに伝えられています。 彼らの系譜や活動の詳細な解明は今後の研究課題と言えるでしょう。

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