目撃者 (1964年のテレビドラマ)
テレビドラマ『目撃者』について
『目撃者』は、1964年11月27日にTBS系列「近鉄金曜劇場」で放送された単発のテレビドラマです。RKB毎日放送が制作を担当しました。このドラマは、実際に大分県姫島村で発生した姫島村リンチ殺人事件を基に創作された作品で、脚本を安部公房、演出を久野浩平が手がけました。主演は内藤武敏が務め、昭和39年度芸術祭奨励賞を受賞しています。
作品概要
ドラマ本編の映像は、横浜市の放送ライブラリーで無料で閲覧可能です。脚本テキストは、1965年の雑誌『新日本文学』1月号に掲載されたほか、『テレビドラマ』5月号と『シナリオ』8月号にも再掲載されました。撮影は全編フィルムによるロケで行われ、1971年には『未必の故意』として戯曲化され、劇団俳優座によって上演されました。
あらすじ
物語は、菊島で発生したヤクザ者・江口高雄の撲殺事件を中心に展開します。江口は7年前に島に現れ、氷屋、カフェー、パチンコ屋を経営していましたが、島民への乱暴狼藉が絶えませんでした。彼は島民を脅してパチンコをさせたり、洗濯物を無理やり洗わせるなど、傍若無人な振る舞いを繰り返していました。
事件をテレビ映画化するため、島民の協力を得て撮影が行われていましたが、事件前の公民館での場面を再現する際、証言と異なる点が見つかります。証言では「鉄ビンの水」をかけられたとされていますが、実際にはお湯であった可能性が浮上します。この不一致から、島民たちが隠している事実があるのではないかと疑念が生まれます。
試写会での島民の反応は鈍く、演出家は江口の妻に取材を試みます。妻は、江口が島民からよそ者扱いされ、泥棒扱いされていたと語ります。また、江口が働いた乱暴はパチンコと洗濯物の2件のみで、事件前の夜も、彼は公民館の宿直に酒を勧めにいっただけだと明かします。7年間もよそ者扱いされ続けた結果、寂しがり屋の夫が乱暴者になってしまったと妻は訴えます。
演出家はナレーションを江口擁護に変えながら撮影を進めますが、島民たちは突然撮影班に向きを変え、襲いかかってきます。
スタッフとキャスト
作品背景
演出の久野浩平は、ドラマの元となった姫島村リンチ殺人事件について、「島では、事件について一種の緘口令がしかれていた」と語っています。取材に行き詰まった久野は、脚本家の安部公房にありのままの手紙を書き、ドラマ制作へと繋げたと述べています。
初版刊行本
- - 『現代文学の実験室1 安部公房集』（大光社、1970年）
戯曲化
参考文献
『目撃者』は、事件の真相を追求するだけでなく、集団心理の恐ろしさや、人間関係の複雑さを描いた作品と言えるでしょう。
もう一度検索
【記事の利用について】
タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。
【リンクついて】
リンクフリーです。