姫島村

大分県姫島村：黒曜石と独自の文化が織りなす島嶼社会

大分県国東半島の北東部、周防灘と伊予灘の境界に位置する姫島村は、周囲を海に囲まれた静かな島です。国東市から約6km沖合に浮かび、東西約7km、南北約4kmの細長い形をしています。島の中央には矢筈山（266m）、西端には達磨山（105m）、西北部には城山（62m）がそびえ立ち、これらの山に囲まれた低地を中心に集落が形成されています。

古代からの歴史と交易

姫島は古くから『古事記』の国産み神話にも登場するなど、歴史的に重要な島でした。姫島産の黒曜石は縄文時代、中国地方や四国地方の遺跡からも発見されており、当時盛んに行われていた広範囲な交易を物語っています。名前の由来は、日本書紀にある意富加羅国の王子にまつわる伝説にちなみ、村内にはそれを祀る比売語曽社が存在します。

中世から近世：水軍の拠点から国際舞台へ

平安時代末期頃からは宇佐八幡宮弥勒寺領となり、その後は大友氏の拠点として、また製塩業や甘藷栽培が盛んに行われるなど、経済的にも重要な役割を果たしました。江戸時代には杵築藩領となり、古庄家が庄屋として島を治めました。

1864年の下関戦争では、関門海峡に近い地理的条件から、英米仏蘭の連合艦隊が拠点とした重要な場所となりました。伊藤博文や井上馨が調停のため来島した記録や、勝海舟による情報収集なども残っており、歴史的にも重要な役割を担いました。また、長州征討に関連した出来事や、大村益次郎暗殺事件での犯人の一時潜伏など、近世の歴史も興味深い出来事です。

近現代：村政と独自の施策

1889年の町村制施行により東国東郡姫島村として発足しました。村政においては、1957年から2012年までの50年以上、藤本熊雄氏とその後を継いだ息子の藤本昭夫氏によって村長職が世襲されるという、全国でも類を見ない状況が続きました。この間、村長選挙は16回連続で無投票当選という異例の事態が続いていました。この背景には、島内の人材不足や、過去の村長選挙で生じた深い対立の経験などが関係していると言われています。2016年の選挙で初めて投票が行われ、2024年の選挙で藤本親子による長年の村政は幕を閉じました。

独自の施策として、1984年に日本で初めて自治体全域で空き缶のデポジット制度を導入し、環境保全に貢献しています。また、人口減少対策としてワークシェアリングを導入、村職員の雇用を確保し、住民の雇用を支えています。

観光と産業

姫島村は、漁業を基幹産業として発展してきました。カレイやタイなどの水産物に加え、かつての塩田跡地ではクルマエビの養殖も盛んです。近年は、観光客の減少に課題を抱えており、新たな観光団体の設立など、観光振興に力を入れています。島内にはホテルや旅館などの宿泊施設も複数存在し、夏に行われる盆踊りは特に有名です。

教育、文化、そしてジオパーク

島内には小学校と中学校があり、高校は本土に通学することになります。姫島盆踊りは、独特の踊りや衣装で知られ、県選択無形民俗文化財にも指定されています。また、2013年には「おおいた姫島ジオパーク」として日本ジオパークに認定され、貴重な地質や自然環境を活かした観光も展開されています。観音崎の黒曜石産地は国の天然記念物にも指定されています。

アクセス

本土との連絡は、姫島村営フェリーが国東市の伊美港と姫島港を結んでいます。島内では村営の巡回バスが運行され、レンタカーやレンタサイクルの利用も可能です。

姫島村は、歴史、文化、自然が調和した独自の島嶼社会です。今後も、その魅力を活かしながら発展していくことが期待されます。

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