盲暦

盲暦（めくらごよみ）についての詳細

盲暦、もしくは「めくらごよみ」とは、江戸時代に造られた和暦の特異な形式であり、視覚的な情報が得られない人々に向けて設計されています。この暦は、月の大小や暦注などを図や記号を使って表現することで、文盲者でも理解できるような工夫がなされていました。特に南部藩の南部盲暦が有名であり、他にも「座頭暦」として広く知られています。近年では視覚障害者に配慮して「絵暦」という表現も使われています。

盲暦の背景

日本の和暦は太陰太陽暦であり、毎年の月の数やその日数も異なるため、閏月もあり、日常個々の生活において暦に対する理解が必要でした。視覚に障害のある人々の日常生活における指導役をする存在、「日知り（聖）」と呼ばれる人々が必要とされていました。その中心人物が盲暦の考案者、八幡善八です。

善八は、正徳年間（1711年-1716年）に南部藩の田山村で書き役を務めていた庄屋で、村人の疲弊を助けるべく独自にこの暦を創り上げました。最初は田山村内でのみ使用されていた盲暦ですが、その評判が広まり、他の町村へも広がっていきました。特に天明4年（1786年）には橘南渓の「東遊記」によって初めて全国的に紹介され、一躍有名になりました。

この盲暦は、視覚障害者だけでなく、農村部の人々にとっても重要な道具となり、生活や農作業の指針として利用されていました。善八は、この暦の背景にある音や意義を視覚的に理解できる方法を考案し、それにより多くの人々が日々の生活を管理できるようになったのです。

盲暦の今

近年では、「絵暦」としても知られ、視覚障害者への配慮がなされています。これにより、かつての盲暦の機能は現在の視覚障害者の生活を支える上でも生かされています。様々な表現法を用いて内容を伝える工夫がなされています。特に、絵解きの形式が印象的であり、視覚に即した理解を促進することを目的としています。

盲暦の作り方は、とても原始的で、木活字を使い、一つ一つの絵が手作業で印刷されます。この手法が能率的ではなく、製作時間がかかることもありましたが、村人たちの必要に応じて精細に作り込まれました。この過程もまた、彼らの記憶とともに受け継がれていくのです。実際、田山瞻暦の製作は明治時代まで続きましたが、県の政策変更に伴い、海を越えることが困難になり、何世代にもわたる知識と技術の継承が失われていくことになりました。

絵解きと図案

盲暦の特徴的な要素は、独特な絵解き形式です。例えば、二つのどんぶり鉢の間に重箱が置かれており、そのそばに矢が置かれている絵は「八十八夜」を表現しています。このように、視覚的な形象とその意味の結びつきを通じて、人々は日付や節気を理解することができる仕組みとなっています。他にも「入梅」や「冬至」を示すためにそれぞれ異なる視覚的な表現が用いられています。

盲暦は、視覚障害者だけでなく、彼らを支える全体のコミュニティにとって重要な役割を果たしており、その深い歴史と文化的背景を考慮することが重要です。江戸時代から今日まで続くこの独特な暦は、生活の一端を支えるために生み出されたものであり、その意義は今もなお色あせることはありません。

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