相原英賢

相原英賢

相原英賢（あいはら えいけん）は、1856年3月3日（旧暦安政3年1月27日）に生まれ、1919年（大正8年）頃にその生涯を終えた、明治期を代表するメソジスト派の牧師である。

生い立ちとキリスト教との出会い

相原は安政3年、江戸麻布にある仙台藩の藩邸で産声をあげた。その後、幼少期から青年期にかけてを仙台の地で過ごす。成長して勉学のため上京し、明治8年（1875年）には、日本でも広く知られていた著名な宣教師ジェームズ・カーティス・ヘボンから英語の指導を受けた。この頃キリスト教に触れ、東京第一長老教会のオーティス・マーチャント・グリーン宣教師のもとで洗礼を受け、信仰の道へと進んだ。

メソジスト派での活動

明治9年（1876年）、相原はそれまで属していた長老派教会から、メソジスト教会へと移籍する。この転籍後、メソジスト派の宣教師ジュリアス・ソーパーや、同じく長老派から移籍してきた大貫文七と協力し、現在の千葉県印旛郡栄町安食にあたる下総安食地方で熱心な伝道活動を展開した。彼らの尽力により、今日の日本基督教団安食教会の源流となる安食属会の基礎が築かれたことは、日本のキリスト教史における特筆すべき功績の一つである。

伝道者としての活動を続ける中で、相原は明治14年（1881年）に執事、明治15年（1883年）には長老の按手礼を受け、聖職者としての地位を確立していく。

各地での牧会と指導

明治19年（1886年）9月からは、弘前教会の第2代牧師として奉仕する。これは、初代牧師であった本多庸一が前年に仙台の美以教会（現・日本基督教団仙台五橋教会）へ転出した後を引き継いだものであった。弘前での相原の牧会は実を結び、この任期中には、後に日本ホーリネス教会監督となる中田重治の先妻、かつ子を含む55名の人々が相原から洗礼を受けた記録が残っている。

弘前での働きを終えた後も、相原は各地を転々としながら牧会・伝道に励んだ。明治24年（1891年）以降は、横浜教会（現・日本基督教団横浜上原教会）や函館教会といった重要な拠点で活動した。

明治31年（1898年）には、さらに活動範囲を広げ、信州地方における連回長老司という指導的な立場に就任し、地域全体の教会をまとめる役割を担った。

渡米と帰国後の活動

明治37年（1904年）、相原はアメリカ合衆国へ渡る。カリフォルニア州オークランドの教会で牧師を務めていた明治38年（1905年）、サンフランシスコで大地震が発生する。この未曽有の災害に際し、相原は日本人震災救助会長として被災した多くの同胞のために救援活動に献身的に尽力し、その指導力を発揮した。

約4年間の滞米生活を終え、明治41年（1908年）に日本へ帰国すると、浅草教会の牧師に就任する。その後、大正元年（1912年）には静岡県藤枝教会の牧師を務めたが、翌大正2年（1913年）に牧師としての活動から身を引き、実業の世界へと転身した。

晩年は実業家として過ごし、大正8年（1919年）頃にその生涯を終えた。

相原英賢は、長老派からメソジスト派への転身、下総安食での開拓伝道、各地での牧会、アメリカでの救援活動など、多岐にわたる経験を通じて、明治期の日本のプロテスタント教会の発展に重要な役割を果たした人物である。

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