相模鉄道の客車

相模鉄道・神中鉄道の客車

相模鉄道（相鉄）および神中鉄道（後の相鉄本線の一部）で使用された客車について解説します。相模鉄道は1943年に神中鉄道と合併し、以降は「相鉄」と表記します。

相模鉄道

ハ1形

1921年の開業時に払い下げを受けた木造二軸客車です。元は鉄道省のハ2546・2548で、1・2の2両が存在しました。1940年に有蓋貨車ワ1形に改造され、1943年に廃車となりました。

ホ1形

1926年の厚木延伸に備えて汽車会社で製造された半鋼製ボギー客車です。1 - 4の4両が在籍し、将来の電化を考慮した前面貫通型の電車のような外観をしていました。車内はロングシートで、つり革も備えられていました。1944年の相模線買収により鉄道省に編入され、ナハ2380 - 2383となりました。後に一部は職員輸送用の職用車ナヤ2660・2661に改造され、推進運転用に前照灯が取り付けられました。

オハ10形

1943年に汽車会社で製造された半鋼製ボギー客車で、オハ11の1両のみが存在しました。窓配置や台車に電車用のTR25を使用するなど、より一層電車に近い構造をしていました。ホ1形と同様に鉄道省に編入され、ナハ2384となりました。

神中鉄道

ロ10形・ハ20形・フハ50形

1926年の開業時に3形蒸気機関車と共に汽車会社で製造されたダブルルーフの木造二軸客車です。二等車のロ10形（10 - 12）、三等車のハ20形（20 - 24）、三等緩急車のフハ50形（50・51）の3形式計10両が存在しました。ロ10形は開業後、一部が三等車に改造され、更に一部はガソリンエンジンを取り付けて気動車化されました。1938年には一部が夕張鉄道に譲渡され、1949年には残りの車両が三岐鉄道や常総筑波鉄道に譲渡されました。ハ24は後に別府鉄道を経て、相鉄に保存されています。

ハ10形

1939年にガソリンカーのキハ10形からエンジンと運転台を撤去して客車化したもので、10・11の2両が存在しました。形式は「ハ」ですが、実際には手ブレーキを備えた「ハフ」でした。

ホハ200形

1943年3月に払い下げを受けた鉄道省ホハユ3315を改造した木造ボギー客車です。元はオープンデッキ付きでしたが、改造により密閉式となりました。1949年に三岐鉄道へ譲渡され、後に日本軽金属の専用鉄道で通勤輸送用として使用されました。

ホハ50形

1944年にディーゼルカーのキハ50形からエンジンと運転台を撤去して客車化したもので、50・52 - 54の4両が存在しました。

まとめ

相模鉄道と神中鉄道では、開業当初から様々な種類の客車が使用されていました。これらの客車は、時代や路線環境の変化に応じて改造や転用が繰り返され、その一部は他社に譲渡されたり、保存されたりしています。特に、ホ1形やオハ10形のように、電車の設計思想を取り入れた客車は、当時の鉄道技術の進歩を物語る貴重な存在と言えるでしょう。

参考文献

柴田重利『カラーブックス562 日本の私鉄13 相模鉄道』保育社、1982年3月
南野哲志・加納俊彦『RM LIBRARY62 三岐鉄道の車輌たち-開業からの50年-』ネコ・パブリッシング、2004年10月
中川浩一「日本の客車落穂集3」『鉄道ピクトリアル』通巻130号、1962年4月号
藤田吾郎『鋼製雑形客車のすべて』ネコ・パブリッシング、2007年

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