県民の歌 (栃木県)

「県民の歌」は、栃木県によって1962年（昭和37年）に制定された県民歌です。この歌の作詞は岡きよし氏と「栃木県県章・県民の歌選定委員会」による補作とされており、作曲は川島博氏が手掛けました。

この歌が生まれた背景には、1960年代に入り全国の多くの都道府県で新たなシンボルとしての県民歌が制定される動きがありました。栃木県でもこうした時代の流れを受け、県章の制定と合わせて県民歌の公募を実施。広く一般から作品が募集され、歌詞については552編、曲については235編もの応募が寄せられました。厳正な審査の結果、作詞には足尾町（現在の岡きよし氏、本名神山清志氏（当時毎日新聞佐野通信部記者）の応募作が選ばれました。作曲は、足利市出身で愛知教育大学で教鞭をとっていた川島博氏の作品が採用されています。選定委員会からは、「歌詞に最もふさわしく、健康で明るく、そして気品のある作品」として高く評価されました。

制定後、「県民の歌」は様々な形で県民に届けられています。最初に歌声を吹き込んだのは、歌手の三浦洸一氏と安西愛子氏によるデュエットです。この音源はビクターレコードからシングル盤として発売され、カップリングには飯田信夫氏が編曲した行進曲バージョンが収録されました。この最初の歌唱音源は、後にCDとして初めて収録されるなど、音源の保存や提供も行われています。

1980年には、栃木県で開催された第35回国民体育大会「栃の葉国体」を記念して制作されたレコードにも収録されました。東芝EMIから発売された『栃の葉国体音頭』シングルのB面には、混声合唱と吹奏楽による二種類のバージョンが収められています。さらに1988年には、より親しみやすい雰囲気を目指し、フォークデュオのダ・カーポ（妻の榊原広子氏は佐野市出身）による歌唱バージョンが録音されました。この音源を収めたカセットテープは県内の公立学校や公共施設に配布され、県の美しい空撮映像を用いたミュージックビデオも制作されるなど、普及に力が入れられました。2005年にも同様の内容でCDが制作され、公立学校へ配布されるなど、継続的に活用されています。

メディアでの露出も多く見られます。ラジオ局である栃木放送では、放送開始前のフィラー音楽として毎朝5時から流されており、現在主に放送されているのはダ・カーポ歌唱のバージョンです。過去には、放送開始の音楽として行進曲バージョンが使われていた時期もありました。テレビ局のとちぎテレビでは、放送終了前に流されており、こちらも主にダ・カーポ歌唱バージョンです。以前は放送開始時にも使用されていました。また、県の公式サイトでは、携帯電話向けに着信メロディーの無料配信を早くから行っており、その後、スマートフォンにも対応した「着うた」の無料配信も開始され、手軽にダウンロードできるようになっています。

栃木県を本拠地とする主要なプロスポーツチームの試合会場でも、たびたび耳にする機会があります。例えば、サッカーの栃木SCでは、ホームゲーム開始前にチームの応援歌ではなく、県民の歌の1番をサポーターや選手が共に歌うのが恒例です。スタジアムの電光掲示板には歌詞が表示され、一体感を高めています。プロ野球の栃木ゴールデンブレーブスも、試合の特定の場面で応援団が県民の歌を演奏し、チームを鼓舞しています。バスケットボールの宇都宮ブレックスの試合でも、会場で演奏されることがあります。

こうした県の積極的な取り組みの結果、「県民の歌」は県民の間での認知度が高く、長野県の「信濃の国」に次ぐ浸透度を持つ県民歌として知られています。制定から長い年月を経てもなお、栃木県のシンボルとして様々な場面で親しまれ続けています。

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