眼蔵寺

眼蔵寺（がんぞうじ）

千葉県長生郡長柄町長柄山に位置する眼蔵寺は、臨済宗妙心寺派に属する寺院です。山号は長柄山と称します。

歴史

寺伝によれば、その起源は1013年（長和2年）に沙門戒乗によって開かれた鳴滝寺に遡ります。その後、1192年（建久3年）に源頼朝が胎蔵界曼荼羅を奉納したことを契機に、胎蔵寺と名を改めました。近世中期には、現在の眼蔵寺という寺号に変わったと伝えられています。

創建当初は律宗寺院でしたが、1289年（正応2年）に象外禅鑑（妙覚禅師）によって中興され、臨済宗に改宗されました。また、1243年から1247年（寛元年間）には、境秀胤が先祖の冥福を祈るために寺を再興したとも言われています。

往時の眼蔵寺は、七堂伽藍を備え、諸山に名を連ねる上総国屈指の名刹として知られていました。上総国の利生塔も置かれ、近世には幕府から朱印20石を与えられるほどの寺格を有していました。

しかし、その後、寺は衰退し、現在は住職のいない無住の寺となっています。かつて利生塔があった場所は「塔根」と呼ばれ、上総守護や関東管領を歴任した上杉朝宗の墓が今も残されています。

文化財

眼蔵寺には、貴重な文化財が数多く残されています。

特に重要なのが、1264年（弘長4年）銘の梵鐘で、千葉県内で最も古い古鐘として知られています。この梵鐘は、当時の鋳工である広階重永によって制作されたもので、高さ91cm、径62.1cm、池の間30.6cm×37.5cmの大きさを誇ります。通常、梵鐘に見られる乳（突起状の装飾）がないのが特徴で、乳の間の各中央には蓮華座の上に月輪を配し、胎蔵界四仏の種子（梵字）が鋳出されています。この無乳の鐘は、非常に珍しく、国内でも数例しか現存していません。眼蔵寺の梵鐘は、その歴史的・美術的価値から、国の重要文化財に指定されています。ちなみに、この眼蔵寺境内からは、1917年（大正6年）に1392年（明徳3年）銘の別の無乳の梵鐘が出土しており、現在は東京国立博物館に所蔵されています。また、山梨県甲州市の向嶽寺にも無乳の梵鐘が現存しています。

本尊である木造釈迦如来及び迦葉阿難像は、千葉県指定有形文化財となっています。

交通アクセス

眼蔵寺へのアクセスは、JR外房線茂原駅からタクシーを利用するのが便利です。

参考文献

『解説版新指定重要文化財 工芸品I』、毎日新聞社、1981
『角川日本地名大辞典 千葉県』、角川書店
* 『日本歴史地名大系 千葉県の地名』、平凡社

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