睡眠欲

睡眠欲について

睡眠欲とは、人が睡眠を求める欲求のことであり、一般的には眠気や睡魔として認識されます。これは食欲や性欲と並び、人間の三大欲求の一つとして知られています。また、仏教用語である五欲（財欲、色欲、飲食欲、名欲、睡眠欲）にも含まれています。

日中の眠気や、食後の眠気、病気、認知症などによって引き起こされる「傾眠傾向」と呼ばれる状態や、高熱や重症によって意識障害が起こり睡眠に陥る「嗜眠」という状態も存在します。傾眠は、ICD-10分類で「R40.0 傾眠」として分類されています。

睡眠欲と断眠実験

睡眠欲に対する抵抗力は、断眠実験によって研究されています。動物実験では、ネズミが2〜3週間の断眠で死亡したり、ネコが15日で死亡したという報告があります。これらの死因は特定されていませんが、ストレス反応が原因である可能性が高いと考えられています。

ヒトにおいては、1946年に行われたランディ・ガードナーの断眠実験が有名です。ガードナーは264時間の連続不眠を達成し、ギネス記録となりました。この実験では、分析能力、知覚、記憶、意欲、発話、運動機能への悪影響や、妄想や幻覚などが現れることが確認されました。また、体重減少や免疫力低下などの身体的な異常もみられました。

ギネス記録は1986年に453時間40分の最長記録を記録しましたが、1997年以後は「精神的および身体的健康に悪影響を与える可能性」、「記録が難しいマイクロスリープと呼ばれる短時間の睡眠状態が発見されたこと」、「非常にまれな遺伝性疾患である致死性家族性不眠症患者の中に記録を破って致死に至った可能性」などの理由から記録の受付を行っていません。

眠気を起こす要因

眠気は、疲労感、酸素濃度低下、食後、病気、認知症などが原因で引き起こされます。また、前日の睡眠不足や睡眠の質の低下は睡眠負債となり、日中の眠気として現れます。

睡眠のメカニズム

睡眠物質の増加: 覚醒時間が長くなると、脳内に睡眠物質が蓄積され、睡眠圧が高まります。これにより、眠気が引き起こされ、睡眠が維持されます。
プロスタグランジンD2: プロスタグランジンD2は、アデノシン濃度を上げ、ヒスタミン系覚醒中枢を阻害することで眠気を引き起こします。
アデノシン: エネルギーとして利用されるATPが分解されると、疲労物質であるアデノシンが生成されます。アデノシンはアデノシン受容体を活性化させ、疲労回復のために睡眠を誘発します。
メラトニン: 概日リズムに関与するホルモンであり、メラトニンの生成能力が低いと不眠症になることがあります。
サイトカイン: 病気になると免疫機能が活発になり、サイトカインが増加し睡眠を誘発します。

覚醒物質の抑制

覚醒状態を維持するための覚醒物質の量が低下すると、眠気が生じます。

オレキシン: 食欲や覚醒状態を生み出す神経ペプチドであり、産出量が低下すると眠気が起きます。
ヒスタミン、ノルアドレナリン: これらも覚醒に関わる物質です。

眠気覚ましのメカニズム

眠気覚ましとして、カフェインを含む飲料などが利用されます。カフェインはアデノシン受容体を阻害することで、疲労感を誤魔化し眠気を覚まします。

眠気の検査

眠気の検査には、他者評価と自己評価法があります。

他者評価: 顔表情眠気評定尺度や、ドライバーモニタリングシステムなどがあります。
自己評価法: エプワース眠気尺度、スタンフォード眠気尺度、カロリンスカ眠気尺度などがあります。

関連項目

睡眠障害
恐眠症
過眠症
断眠療法
あくび、ストレッチ
催眠術
睡眠中枢'>[視床下部]
一夜漬け
偽覚醒
睡眠慣性(ねぼけ)
セロトニン

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