矢口

東京都大田区矢口：歴史と現代が交差する多摩川沿いの街

東京都大田区南部に位置する矢口は、環状八号線と多摩川、そして第二京浜に囲まれた、歴史と現代が混在する魅力的な地域です。行政地名は矢口一丁目から三丁目で、住居表示は実施済みです。

地理と都市計画

矢口は、北は千鳥、東は多摩川、南は神奈川県川崎市、西は下丸子と隣接しています。多摩川沿いは旧堤通りが走り、多摩堤通りや東急多摩川線が地域を貫き、武蔵新田駅が地域の中心的な役割を担っています。沖積低地特有の平坦な地形が広がり、多摩川と堤防の間には緑地帯が広がっています。

都市計画法上の用途地域は、駅周辺や商店街の一部が近隣商業地域に指定されているものの、大部分は準工業地域となっており、住宅と中小規模の工場が混在する独特の街並みが形成されています。2024年1月1日時点の公示地価は、矢口2-12-10地点で1㎡あたり51万1000円と報告されています。

歴史と文化

矢口の名は、古くから存在した「矢口の渡し」に由来します。1358年、新田義興がこの渡船場で暗殺されたという伝説があり、その際に住民が義興を祀る新田神社を創建したとされています。地名は1395年の『岩松氏所領注文』に初出します。

多摩川の流路は時代と共に変化し、矢口の渡しの位置も何度か移動しました。江戸中期には東八幡神社の南に落ち着き、多くの旅人を迎え入れました。地域内には鎌倉街道が南北に走り、現在も東八幡神社前から新田神社前の商店街を経て北西端に至る道筋が残っています。

江戸時代には荏原郡矢口村と呼ばれ、1770年に上演された浄瑠璃『神霊矢口渡』の人気により、新田神社は多くの参詣者を集めるようになりました。明治22年には周辺8ヶ村を編入して村域を拡大し、昭和3年には町制を施行。昭和7年には蒲田区矢口町となりました。昭和24年の多摩川大橋完成によって、中世以来続いた矢口の渡しは廃止されました。

昭和41年の住居表示実施により、現在の矢口と東矢口が成立。昭和44年には、第二京浜で発生した学生デモによる暴動事件が記憶に残る出来事として挙げられます。

地名の由来については、日本武尊がこの地で矢合わせをしたという伝承や、『新編武蔵風土記稿』に記されている「矢食村」という旧称など、複数の説があります。

交通と施設

矢口は、第二京浜国道（国道1号）、環状八号線、多摩堤通り、旧堤通りといった主要道路が整備されています。鉄道は東急多摩川線の武蔵新田駅が利用でき、隣接する矢口渡駅も利用可能です。バス路線としては、大田区コミュニティバス「たまちゃんバス」、東急バス、京急バスの羽田空港リムジンバスなどが運行しています。

地域内には、大田区役所矢口特別出張所、警察署、消防署、学校、保育園、福祉施設、区民センター、スポーツ施設、神社仏閣などが整備されています。また、稲葉製作所や桂川精螺製作所といった企業も本社を置いています。大規模集合住宅も多く建設され、近年では再開発も進んでいます。

郵便番号は146-0093で、集配局は千鳥郵便局です。

まとめ

矢口は、歴史的な背景と現代的な開発が共存する、多様な魅力を持つ地域です。多摩川の自然と、歴史を感じさせる神社仏閣、そして活気のある商店街や近代的な施設が調和した、独特の雰囲気を醸し出しています。今後も、歴史と自然を活かした発展が期待される地域です。

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