矢川神社

矢川神社（やがわじんじゃ）

滋賀県甲賀市甲南町森尻に位置する矢川神社は、地域の重要な信仰の場です。この神社では、大己貴命（おおなむちのみこと）と矢川枝姫命（やがわえひめのみこと）が主祭神として祀られています。大己貴命は殖産興業や健康長寿の神様として知られており、矢川枝姫命は芸事の上達や願いを叶えることを助けてくれる神様として信仰されています。これらは古事記にも記載されており、矢川枝姫命は八河江比売とも呼ばれています。また、古事記の中では大国主の系譜に登場し、彼女にまつわる神話が今に伝わっています。

歴史

矢川神社は、社伝によれば天平年間に創建されたと言われており、聖武天皇が紫香楽宮を造営した際に建立されたとされています。平安時代の文書である延喜式神名帳にも近江国甲賀郡の神社として推薦され、歴史的にも重要な立場を占めていました。1337年の史料には「杣野河宮」として登場し、中世には地域の信仰の中心として土豪層からの信仰を集めていたことがわかります。

戦国時代には、甲賀郡中惣の集会所として利用され、地域の結束を強める役割を持っていました。しかし、1585年の甲賀衆の没落を契機に、祭祀の形態には変化が見られ、1652年には9つの村が新宮神社に、6つの村が日吉神社に、それぞれ氏子として振り分けられました。江戸時代には水口藩の崇敬社としても知られ、1842年には「甲賀騒動」と呼ばれる大きな農民の決起があり、神社の社頭に多くの農民が集まりました。

明治時代以前は「矢川大明神」と呼ばれ、広域にわたる氏子圏を持っていた神社でした。ここでは神仏習合の影響を受け、神宮寺である矢川寺清浄院での祭祀が行われていました。残念ながら、現在の矢川寺は廃寺となっています。

国史跡と文化財

矢川神社の境内は、甲賀郡中惣遺跡群の一部として国史跡に指定されています。また、文化財においても重要な役割を果たしており、県指定文化財として、1482年に建立された楼門が伝えられています。この楼門は、元々二層でしたが、風雨によって上階を失ったとされています。さらに、横井金谷による紙本淡彩の棋書仙人図や山水図も県指定の文化財として保存されています。

市指定の文化財には、1755年に再建された本殿があります。また、甲賀地方で最も古く、最大の規模を誇る1671年に建造された石造反橋（太鼓橋）や平安時代の木造男神像が取り壊されずに残っています。さらに、同じく平安時代製作の木造女神像も存在し、ここでの文化的な価値が高まっています。

まとめ

矢川神社はその歴史的背景、信仰の深さ、文化財の宝庫として、多くの信者や観光客が訪れています。地域の歴史を体験し、神社の静かな空間でリフレッシュすることができる貴重な場所です。

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