矢野健太郎 (数学者)

矢野健太郎について

矢野健太郎（やの けんたろう）は、1912年に誕生し、1993年に逝去した日本の著名な数学者です。東京工業大学の名誉教授であり、特に微分幾何学を専門とし、数々の業績を残しました。彼はまた、数学教育の普及に尽力した著者でもあります。

生い立ちと学歴

矢野は東京市に彫刻家の子として生まれ、小学校時代にアインシュタインの訪日を受けて相対性理論に興味を持ちました。その後、市立東京二中、旧制東京高校を経て東京帝国大学の理学部数学科を卒業しました。卒業後は大学院に進み、同時に東京物理学校の講師も務めました。1936年にはパリ大学へ留学し、射影接続空間に関する研究で理学博士の学位を取得しました。

研究と業績

矢野は数学の発展に多大な貢献をしました。1930年代には、グレゴリオ・リッチやレビ・チビタといった数学者たちの研究に触れ、絶対微分学の重要性を理解しました。第二次世界大戦後、彼の研究は活発化し、プリンストン高等研究所においてサロモン・ボホナーのもとで大域微分幾何学の研究に従事するなど、国際的な場でも高く評価されました。また、アインシュタインとの親交を深めたことも知られています。彼の代表作『アインシュタイン伝』では、この関係について詳細に綴られています。

教育者としての活動

数学者としての活動の傍ら、矢野は教育にも力を入れ、多数の数学書を執筆しました。『数学通論』や『教養の数学』などでは専門的な内容を一般向けに分かりやすく解説し、また、彼の啓蒙書『数学の楽しさ』やエッセイ集『数学物語』は多くの人々に親しまれています。市民向けのテレビ番組「暮らしの数学」にも出演し、数学の楽しさを広めるために尽力しました。特に、戦後に岩波書店が企画した「数学入門シリーズ」の執筆者としても知られています。

著作と翻訳

矢野健太郎の著作は非常に多岐に渡ります。彼の代表作には、初等リーマン幾何学やリーマン幾何学入門、数の生い立ちなど多くの教科書や解説書があります。彼の著書は多くの大学や専門学校で教材として採用され、数学教育において今でも重要な役割を果たしています。また、アイザック・アシモフの作品の翻訳も手掛けており、数学の世界を広げるために尽力しました。

最後に

矢野健太郎は、日本の数学界において不可欠な存在であり続けています。彼の研究や著作は、後世にわたって数学の理解を深める貴重な財産となっています。彼の影響を受けた多くの数学者や学生たちが、彼の教えを引き継ぎ、数学の発展に寄与していることに誇りを持っています。

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