石井五郎

石井五郎：阪神電鉄と大阪タイガース創設を支えた実業家

石井五郎（1888年 - 1951年）は、日本の実業家であり、阪神電気鉄道（現在の阪神電鉄）の副社長、そして草創期の大阪野球倶楽部（現在の阪神タイガース）の監査役を務めた人物です。その生涯は、日本の近代化とプロ野球の黎明期における重要な役割を示しています。

若き日の歩みと実業界への進出

石井五郎は、1904年に東京府立第一中学校を卒業後、第一高等学校を経て東京帝国大学法科大学へと進みました。1912年には高等文官試験に合格し、近江銀行に入行します。その後、1934年に朝日海上火災保険（現在のあいおいニッセイ同和損害保険）の専務取締役に就任し、実業界でのキャリアを積み重ねていきました。

阪神電鉄への転身と球団創設への貢献

1935年、石井五郎は阪神電鉄に専務取締役として迎えられました。当時、阪神電鉄の経営陣は刷新期を迎えており、石井はその重要な一翼を担うことになります。同年、大阪野球倶楽部が設立されると、石井は監査役に就任し、球団創設の中心人物の一人として、細野躋取締役支配人（のち専務）らと共に、球団の基盤を築き上げました。特に、球団の運営においては、電鉄本社との連携を密にし、安定した組織運営に尽力しました。

当時の大阪野球倶楽部のフロントは、専務取締役に富樫興一、常務取締役に田中義一、取締役支配人に中川政人というメンバー構成でした。石井は、電鉄本社の専務として、監査役の立場から組織全体を見守る役割を担いました。初代監督の人選においては、当初、田中義一が関大野球部の本田竹蔵を推しましたが、興行面を考慮し、最終的には早大の森茂雄が選ばれるという経緯がありました。この人選の過程にも、石井が関わっていたと考えられます。

阪神電鉄副社長としての手腕

1942年、石井五郎は阪神電鉄の副社長に就任し、次期トップとしての期待が寄せられました。しかし、第二次世界大戦後の社会情勢の激変と労働運動の高まりの中で、石井は辞任を余儀なくされます。1946年、長年阪神電鉄を支えてきた細野躋専務と共に、副社長の職を辞任しました。

その後

1951年、石井五郎は62歳でその生涯を閉じました。石井の功績は、阪神電鉄の発展だけでなく、プロ野球黎明期における大阪タイガースの創設と発展に大きく貢献したことにあります。彼の経営手腕と組織運営能力は、今日においても高く評価されています。

まとめ

石井五郎は、実業家として、またプロ野球の発展に寄与した人物として、日本の近代史にその名を刻んでいます。阪神電鉄という大企業の経営に携わりながら、大阪タイガースというプロ野球チームの設立を支えた彼の功績は、後世に語り継がれるべきでしょう。

参考文献
* 『CD 現代日本人名録 物故者編 1901 - 2000』（日外アソシエーツ）

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