石井保雄

石井 保雄

日本の法学者である石井保雄（いしい やすお）は、1953年7月に生まれました。専門は労働法および労働法学史であり、長年にわたり研究教育活動に従事し、現在は獨協大学名誉教授としてその知見を伝えています。

経歴

東京都出身の石井氏は、1977年に中央大学法学部を卒業しました。さらに研鑽を積むため、1982年には一橋大学大学院法学研究科博士課程において単位を取得し、法学修士の学位を得ています。大学院では、労働法学の泰斗として知られる蓼沼謙一氏に師事しました。

研究者としてのキャリアは、1983年に亜細亜大学法学部の助手としてスタートしました。その後、同学部の講師、助教授を歴任し、1994年には教授に昇任しました。2003年からは獨協大学法学部教授として教鞭を執り、多くの学生を指導しました。教育・研究における長年の功績が認められ、2023年からは獨協大学の非常勤講師を務めつつ、名誉教授の称号を得ています。

研究活動

石井氏の研究は、現代の労働問題、いわゆる「アクチュアルな問題」に研究の焦点が当てられがちな労働法分野において、日本の労働法学がたどってきた歴史、そしてその学説の変遷にも深く光を当ててきた点に特色があります。労働法学史や学説史の研究を精力的に行い、日本の労働法学を形成した重要な研究者たちの業績や思想を丹念に掘り起こしてきました。

研究対象とした人物は多岐にわたり、末弘厳太郎、後藤清、吾妻光俊、有泉亨、浅井清信、津曲蔵之丞、菊池勇夫、孫田秀春など、日本の労働法学史に名を刻む学者たちについて詳細な論文を執筆しています。特に、戦前・戦中という激動の時代における労働法学がどのような役割を果たし、どのように変化していったのかを明らかにすることに貢献しました。

受賞歴

石井氏の労働法学史研究、とりわけ戦前・戦中という時代における労働法学のあり方を明らかにした業績は高く評価されています。2016年度には、その成果が認められ、第31回冲永賞を受賞しました。この受賞の対象となったのは、「わが国労働法学の生誕 ―戦前・戦時期の末弘厳太郎―」と「戦前・戦中期における後藤清の社会法学 ―時代の伴走者の記録―」という、いずれも戦前・戦中の労働法学史に関する二つの重要な論文です。

主な著書

石井保雄氏の主な著書には以下のものがあります。

『法学概論』創成社, 1986年
『個別労働紛争処理システムの国際比較』日本労働研究機構, 2002年
『基本民事法』成文堂, 2005年
『労働者人格権の研究―角田邦重先生古稀記念〈上巻〉』信山社出版, 2011年
『労働者人格権の研究―角田邦重先生古稀記念〈下巻〉』信山社出版, 2011年
『労働法理論 変革への模索 ― 毛塚勝利先生古稀記念』信山社, 2015年
* 『わが国労働法学の史的展開』信山社, 2018年

これらの著書や多数の論文を通じて、石井保雄氏は現代の労働法のみならず、日本の労働法学が受け継いできた知的な遺産を掘り起こし、その歴史的意義を現代に問い続ける重要な貢献を果たしています。

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