有泉亨

有泉亨（ありいずみ とおる）

有泉亨は、1906年6月10日に山梨県で生まれ、1999年12月20日に亡くなった日本の法学者です。専門は労働法であり、東京大学名誉教授、弁護士としても活躍しました。我妻栄の門下生としても知られています。

学歴と職歴

有泉は、1928年に第一高等学校を卒業後、1932年に東京帝国大学法学部法律学科を卒業しました。1933年には同大学法学部の助手となり、1940年には京城帝国大学法文学部助教授、1944年には同法文学部教授に昇進しました。第二次世界大戦後の1946年に日本に引き揚げ、法政大学法学部教授に就任。1947年には東京大学社会科学研究所助教授、1948年には同研究所教授、1955年には所長を務めました。

1962年には東京大学から法学博士の学位を授与され、1966年に定年退官。その後、1967年に弁護士となり、上智大学法学部教授に就任しました。上智大学では、1969年に大学院法学研究科委員長、1970年に評議員、1972年に法学部特任教授を歴任し、1977年に退職しました。

また、東京都立労働研究所（2001年度に廃止）では所長を務め、旧司法試験第二次試験考査委員、法制審議会民法部会委員、社会保険審議会会長など、数々の公職も歴任しました。

研究内容と業績

有泉は、民法と労働法を専門とし、社会法の分野で数多くの立法に参画しました。特に労働法の分野での貢献は大きく、日本の労働法体系の発展に重要な役割を果たしました。我妻栄との共著『民法』は、法学の分野で広く知られています。我妻栄の高弟であり、その研究は多くの後進に影響を与えました。弟子には山口浩一郎などがいます。

著書

有泉は、多数の著作を執筆しました。主な著書としては、以下のようなものがあります。

『労働者の企業参加』中央労働学園　1948
『労働争議の法理』白日書院　1948
『民法』勁草書房　1951
『親族法・相続法〔新版〕』弘文堂　1971
『不法行為理論の操作的構成』勁草書房　1957
『労働争議権の研究』御茶の水書房　1957
『集団住宅とその管理』東京大学出版会　1961
『労働基準法』有斐閣　1963
『双生のくるみ』日本評論社　1966
『生活変動と法』日本放送出版協会　1980
『桃源郷 私の少年記』一粒社　1986

共編著

『民法』我妻栄共著　一粒社　1954
『労働争議』沼田稲次郎,峯村光郎共編著　勁草書房　1954
『就職から失業まで 従業員の法・組合員の法』青木宗也共著　法政大学出版局　1955
『売春』団藤重光共編　河出書房　1955
『夫婦の法律』立石芳枝共編　河出書房　1955
『給与・公営住宅の研究』編　東京大学出版会　1956
『相続』加藤一郎共編　河出書房　1956
『借地借家法の研究 比較法的考察』編　東京大学出版会　1958
『英米の労働組合』桜林誠共著　日本労働協会　1959
『民法』三島宗彦共編　高文社　1960
『労働法演習』石井照久共編　有斐閣　1961
『労働法辞典』外尾健一共著　一粒社　1961
『暮らしの中の法律』三淵嘉子,渡辺道子共編著　読売新聞社　1962
『日本労使関係の研究』編　東京大学出版会　1963
『民法. 第3 (親族,相続)』西井竜生共著　高文社　1963
『労働法大系』全5 石井照久共編　有斐閣　1963
『経営法学全集』全20巻　石井照久,金沢良雄共編　ダイヤモンド社　1965-68
『労働時間の法律問題』編著　日本労働協会　1966
『ヨーロッパ諸国の団地管理』編　東京大学出版会　1967
『労働法概説』編　1967　有斐閣双書
『職場の労働法』石井照久共編　日本生産性本部　1968
『労働法基本判例集』編　一粒社　1970
『労働災害の法律相談』編　有斐閣　1971
『日本の労使関係と法』編　有斐閣　1972
『採用と労務』中川善之助共編　第一法規出版　1974
『全訂社会保障関係法』全5 中野徹雄共編　日本評論社　1982―83

記念論集

『労働法の解釈理論 有泉亨先生古稀記念』編集代表:沼田稲次郎　有斐閣　1976


有泉亨は、日本の法学、特に労働法の発展に大きく貢献した人物として、その功績は今もなお高く評価されています。

もう一度検索