石井子彭

石井子彭（いしい しほう）は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した儒学者です。元文3年（1738年）に江戸で生まれ、館林藩士である石井高富の養子となりました。

経歴

幼少の頃から藩主である松平武元の寵愛を受け、その才能を開花させました。武元の右筆として老中職を補佐するなど、政治的な手腕も発揮しています。明和3年（1766年）の大火の際には、財産を顧みず自著のみを持って避難したというエピソードも残っています。

学問においては、初め古学を学びましたが、後に朱子学に転じ、闇斎学派の服部栗斎に接近しました。天明6年（1786年）には栗斎の紹介で頼春水と知り合い、その後は頼杏坪とも交流を深めました。その他、木内石亭、大田南畝、安達清河、熊坂台州、稲葉黙斎など、当時の多くの文化人と親交がありました。

館林に帰郷してからは、藩校である道学館の教授兼侍読として後進の育成に尽力しました。記録方としても活躍し、多忙な日々を送る中でも読書を欠かさず、常に知識の探求に励んでいました。

寛政13年（1801年）から文化9年（1812年）にかけて、松平家や藩士の墓誌を多く記しています。
文化9年（1812年）8月29日に館林で亡くなり、善長寺に葬られました。

著作

石井子彭は、多くの著作を残しました。中でも代表的なものとして、以下のものが挙げられます。

『続三王外記』: 主君である松平武元が仕えた徳川吉宗、家重、家治の3代について、職務上知り得た情報を基に、太宰春台の『三王外記』の誤りを正したものです。田安宗武の蟄居や御三卿の創設など、幕府の内部事情にも触れています。
『五王制略』: 幕府の制度について記したものです。
『東都歳時記』: 江戸の風俗を記録したもので、頼春水が校正に携わっています。
『望海亭詩集』
『甲府支族松平家記録』
『三世大超公御年譜』: 松平武元の年譜です。
* 『四世大隆公御年譜』: 松平武寛の年譜です。

家族

石井子彭は、服部正之の息子として生まれました。石井高富の養子となり、二度の結婚をしています。次男の石井芚もまた、歴史や書道に精通し、館林藩の右筆として活躍しました。

石井子彭は、儒学者としてだけでなく、文化人としても多才な人物でした。その著作は、当時の社会や文化を知る上で貴重な資料となっています。

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