頼杏坪

頼杏坪（らい きょうへい）

頼杏坪（らい きょうへい）は、宝暦6年（1756年）に生まれ、天保5年（1834年）に没した江戸時代の儒学者であり、広島藩士として活躍しました。

生涯

杏坪は、頼惟清（亨翁）の四男として竹原に生まれました。兄には頼春水、頼春風がおり、甥には著名な儒学者である頼山陽がいます。幼少期に母を亡くし、父と兄に育てられました。商家に生まれた杏坪は、25歳で大坂に出て儒学を学び、その後、兄の春水と共に江戸で服部栗斎に師事しました。

30歳で広島藩学問所の儒官に迎えられ、天明5年（1785年）には広島藩主の子である浅野斉賢の教育係を務めました。頼春水、頼春風、頼杏坪の三兄弟は、いずれも文才に恵まれた儒者であり、優れた漢詩を多く残しました。杏坪は、二人の兄とは異なり、地方行政官としての足跡を残しています。50代半ばを過ぎてから郡代官や三次町奉行として藩政に携わりました。

文化10年（1813年）には、58歳で三次郡・恵蘇郡の代官に任命されました。その後、三上郡・奴可郡を加えた備後国北部4郡（現在の三次市・庄原市）の代官を歴任し、備北各地の村々を歩いて農民の声を聞き、政治に反映させようと努めました。当時、備北地方は百姓一揆が頻発する地域でしたが、杏坪は飢饉に備えて柿を植えたり、神社に老人を集めて敬老会を開催するなど、地域住民に寄り添った政策を行いました。

文政11年（1828年）には、73歳で三次町奉行に任じられ、家族と共に三次に転居しました。文政12年（1829年）には、甥の頼山陽が三次にある杏坪の役宅である運甓居を訪れ、漢詩を残しています。文政13年（1830年）に三次町奉行を辞し、広島に戻りました。天保5年（1834年）に79歳で病没し、比治山の安養院（現在の多聞院）に葬られました。嫡子は頼采真（舜燾）です。

杏坪は、『芸備孝義伝』や『芸藩通志』などの藩史編纂に携わったほか、「原古編」「春草堂詩鈔」などの著作があります。明治42年（1909年）には、その功績が認められ、従四位を追贈されました。

人物

頼杏坪は、儒学者としてだけでなく、地方行政官としても優れた手腕を発揮しました。農民の声に耳を傾け、地域の実情に合わせた政策を実行することで、備北地方の安定に貢献しました。また、文才にも恵まれ、多くの漢詩を残しています。その多才ぶりと人柄から、多くの人々に慕われました。

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