石器時代から来た男

『石器時代から来た男』と『5万年前の男』

エドガー・ライス・バローズの手による『石器時代から来た男』（英: The Eternal Lover）は、原始人が現代の世界に蘇るという斬新なコンセプトのSF小説で、全2部から構成されています。第1部「新第三紀のヌー」は1914年に発表され、続く第2部「原始時代の恋人」は1915年に発表されました。1925年にはこの作品が単行本化され『永遠の恋人』というタイトルで刊行され、その後『永遠の野蛮人』としても印刷されることになります。日本語訳は1977年に発売され、厚木淳の手によるものとなっています。特に挿絵やカバーイラストは武部本一郎が担当しており、視覚的にも魅力が引き立っています。

作品の概要

ストーリーは、第1部で原始人ヌーが現代アフリカに姿を現し、かつての恋人を求めて冒険を繰り広げる様子が描かれています。彼は地震によって時空を超え、現代の世界に迷い込みます。一方で第2部では、ヌーと恋人が再び原始時代に戻り、そこでの冒険が展開します。翻訳者である厚木淳は、本作について「バローズには珍しい悲恋もの」であり、「全バローズ作品の中でも特に完成度と迫力が際立つ」と述べています。

この小説には、バローズの他作品でおなじみのキャラクター、グレーストーク卿（引退したターザン）も登場しており、彼の存在が物語にさらなる深みを与えています。また、現代編のヒロインであるヴィクトリア・カスターの兄、バーニー・カスターも『ルータ王国の危機』で主役として活躍しています。

作品の背後

バローズの作品は、およそ110作に及びますが、主な舞台設定は現代や未来に重きを置いています。過去の時代について扱った作品は非常に希少であり、本作品はその中でも特異な存在となっています。同じバローズによる作品である『カリグラ帝の野蛮人』やアパッチ・シリーズなども、過去の時代を描いてはいるものの、厳密な時代考証を必要としない点では本作品と同様です。

ストーリーとキャラクター

第1部

物語の冒頭では、10万年前の地球を舞台に、主人公ヌーがウー（剣歯虎）を狩ろうとしている様子が描かれます。彼は恋人ナット・ウルへの求婚として、ウーの首を持ち帰る決意をしていましたが、地震によって洞窟に閉じ込められてしまいます。

現代では、ヴィクトリア・カスターと兄バーニーがグレーストーク卿の領地に招待され、そこだと生じた地震により、彼女は自身の夢に恋する男性が現れることに困惑します。彼女の邸宅や周囲の環境がナット・ウルを連想させるようで、物語は幻想と現実が交錯する展開を見せるのです。

ヌーは、地震をきっかけに現代に出現し、彼の存在が彼女の心に揺らぎを引き起こすことになります。彼は戸惑いながらも、部族の洞窟へ戻ろうと努めますが、その過程でヴィクトリアを助けることになります。彼女にとって、夢の男性が目の前に現れることが、物語の大きな転機をもたらします。

第2部

第2部では、ヌーとヴィクトリアがタイムスリップによって再び古代の地球に戻り、冒険を繰り広げます。彼らは損傷を受けた洞窟に戻りますが、今度は直面する地震に気をもみつつも、かつての生活に戻ろうと奮闘します。

ナット・ウルの存在や部族内の展開、さらには再会を目指す彼らの愛の力がテーマとなり、物語はクライマックスへと向かいます。残念なことに、結末は夢のような形で締めくくられ、両者の運命が再び否応なく現実へと引き戻されることになり、悲劇的な余韻を残します。

バローズ作品特有の瑞々しさや躍動感が感じられる一方、物語には人間関係の複雑さや運命に翻弄される姿が巧みに描かれており、読む者に強い印象を残します。

結論

『石器時代から来た男』は、時代を超えた恋愛と冒険の物語であり、バローズの作品群の中でも特に評価されています。現代と過去を行き交う壮大な物語は、読者に深い感動を与え、忘れがたい印象を残すことでしょう。

また、短編『5万年前の男』も紹介されており、同じく蘇った原始人が恋人を追求するストーリーが描かれていますが、こちらは報われない結末を迎えるなど、テーマに多様性を見せています。バローズの創造したこのユニークな世界観は、今なお多くの読者を魅了し続けています。

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