石天応

石天応（せき てんおう）

石天応（1162年 - 1222年）は、金末からモンゴル帝国初期にかけて活躍した漢人将軍です。字は瑞之、興中府永徳県（現在の遼寧省一帯）の出身。

生涯

石天応は若い頃から騎射に優れ、学問も好む人物として郷里で知られていました。1211年、チンギス・カンによる金朝侵攻が始まると、石天応は左翼万人隊長のムカリ率いるモンゴル軍に投降します。ムカリは石天応の才能を見抜き、興中府尹・兵馬都提控に任じました。これにより、石天応はモンゴル軍の一員として戦うことになります。

石天応は武器の製造や状況に応じた柔軟な用兵でムカリの信頼を得て、龍虎衛上将軍・元帥右監軍といった要職を歴任しました。彼の部隊は黒色の旗を使用していたことから、「黒軍」と呼ばれていたそうです。ムカリの下で大小200以上の戦いに参加し、常に先頭に立って奮戦した石天応は、その功績により右副元帥に昇進しました。

1221年、モンゴル軍が陝西方面への侵攻を開始すると、石天応は西夏領の東勝済河を経由して南下し、葭州を攻略します。彼はムカリに対し、西夏の信用性を疑い、葭州の重要性を説き、守備を固めるべきだと進言しました。ムカリはこの進言を受け入れ、石天応に金紫光禄大夫・陝西河東路行台兵馬都元帥の地位を与え、5000の兵と共に葭州に駐屯させました。石天応は自らの進言通り、多くの船を建造して船橋を架けようとしましたが、増水を恐れる諸将の反対を押し切り、完成させました。その後、王公佐が失地回復のため函谷関を攻めてきましたが、船橋を見て撤退したため、石天応は葭州・綏州一帯を平定することに成功しました。

その後、石天応は汾水の東でムカリから河中方面に進出するよう指示を受けます。河中への進出に際し、配下の者からは潼関や京兆に金軍が駐屯していること、降伏民の不安定さから反対意見が出ましたが、石天応は河中の重要性と自身の年齢を理由に、進出を強行しました。

1221年9月、石天応は軍を率いて河中に移りますが、彼の動きを察知していた金軍が河中を襲撃。石天応は呉沢を伏兵として配置していましたが、呉沢が酒に酔って任務を放棄したため、金軍は間道を進んで河中府城下に到達します。不意を突かれた石天応軍は混乱し、新参兵が逃亡する中、金軍の攻撃を受けました。石天応は自ら奮戦するも、わずか40騎余りとなり、撤退を勧められます。しかし、石天応はかつて自身の進言を無視して河中に進出したことを後悔し、ムカリへの申し訳なさから、徹底抗戦を決意。激戦の末、壮絶な戦死を遂げました。この知らせを聞いたムカリは、石天応の死を深く悼んだと言われています。

死後

石天応の死後、息子の石煥中・石執中・石受中らはモンゴル帝国に仕え、その才能を発揮しました。また、石佐中（石天応の弟の石天禹の子）は河中の敗戦から生き残り、ムカリの助けを得て石天応の仇を討ちました。石佐中の子である石安琬もクビライに仕え、活躍しています。

参考文献

『元史』巻149 列伝36 石天応伝
『新元史』巻146 列伝43 石天応伝

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