石川倉次

石川倉次 - 日本点字の父

石川倉次（1859年2月28日 - 1944年 12月23日）は、日本の教育者であり、特に視覚障害者教育において多大な貢献をした人物です。彼は、ルイ・ブライユが考案した6点点字を日本語に翻案し、日本における点字の基礎を築いたことから「日本点字の父」と呼ばれています。

生涯

浜松時代

1859年、石川倉次は浜松藩士の父・専七と母・ゑしの間に、浜松（現在の静岡県浜松市）で生まれました。幼少期から学問に励み、藩校・克明館では漢籍、西洋砲術、英語を学びました。当時の浜松藩は財政難に苦しみ、母の体調も優れない中、少年時代の倉次は、藩の財政状況と母の健康を案じていました。

鶴舞時代

1868年、父の主君である井上正直が上総国（現在の千葉県）に国替えとなり、石川一家は翌年に鶴舞（現在の千葉県市原市鶴舞）に移り住みました。倉次は鶴舞の藩校に入学しましたが、学制発布により藩校は閉鎖され、小学校に改編されました。倉次は小学校を首席で卒業し、その後、教員として採用され、教育者の道を歩み始めました。

小学校教員時代

1875年、倉次は千葉師範学校教員検定試験に合格し、小学校教員として正式に勤務しました。その後、新聞記者を目指して一時上京しましたが、再び教員を志して千葉師範学校に編入し、卒業後は千葉県内の小学校で教鞭を執りました。この時期に、倉次は国語や国字に関心を抱き、東京の「かなのくゎい」に参加し、小西信八と出会いました。この出会いが、後の点字翻案へと繋がります。

点字翻案と普及時代

1886年、茂原小学校の校長に着任した倉次は、小西信八の誘いを受け、東京盲唖学校（後の東京盲学校）に赴任しました。当初は固辞していましたが、小西の熱意に打たれ、1887年に同校に助教諭兼書記として着任しました。ここで、倉次はブライユ点字の日本語への翻案を依頼され、同僚の遠山邦太郎らとともに研究を開始しました。そして、1890年に、倉次が考案した6点点字案が日本点字として採用されることになりました。倉次の案は、3点2行の6点点字で、日本語の五十音を効率的に表現できるものでした。

日本点字の制定後、倉次は点字の普及活動に尽力し、全国の盲学校へ点字一覧を配布したり、各地へ出張して指導を行いました。1894年には、日本初の点字出版物を発行し、1898年には点字拗音を制定して日本点字を完成させました。1901年には、倉次が翻案した点字が「日本訓盲点字」として官報に掲載され、公的に認められました。

また、倉次は点字の普及活動だけでなく、点字を表記するための機器の開発にも熱心に取り組みました。1898年には「懐中点字器」を、1904年には「イシカハ・タイプライター」という点字タイプライターを開発しました。

倉次は、教育者としても優れており、1899年には高等師範学校の教諭兼訓導に任命され、1901年からは東京盲唖学校でも教鞭を執りました。

1910年に東京盲学校が新設された後も、倉次は東京聾唖学校に残り、1925年に66歳で退職するまで教員として勤務しました。

晩年

退職後も、倉次は嘱託として東京聾唖学校で講師を務めましたが、1927年にその任を解かれてからは、家族や教え子たちに囲まれ、各地を旅行するなど充実した日々を過ごしました。1929年には自叙伝を出版し、1930年には生誕地である浜松に記念碑が建設されました。

1940年に日本点字制定50周年記念式典が開かれた際には、感謝状が贈られました。1944年、戦争により疎開していた群馬県安中町で85歳で亡くなりました。その生涯は、日本点字の発展と視覚障害者の教育に大きく貢献しました。

栄典

1919年（大正8年）2月20日 - 従五位
1925年（大正14年）3月28日 - 正五位

勲章

1901年（明治34年）12月21日 - 勲六等単光旭日章
1909年（明治42年）6月28日 - 勲五等瑞宝章
1923年（大正12年）1月30日 - 勲四等瑞宝章

参考文献

フランク・B・ギブニー／編編『ブリタニカ国際大百科事典』 13巻（第2版改訂）、ティビーエス・ブリタニカ、1991年。
足立洋一郎『愛盲：小杉あさと静岡県の盲教育』静岡新聞社、2014年。ISBN 978-4-7838-0369-0。
小倉明『闇を照らす六つの星：日本点字の父　石川倉次』汐文社、2012年。ISBN 978-4-8113-8880-9。
高橋昌巳／監修、こどもくらぶ／編編『ルイ・ブライユと点字をつくった人びと』岩崎書店〈調べる学習百科〉、2016年。ISBN 978-4-265-08437-1。
鈴木力二／編編『日本点字の父石川倉次先生伝』日本点字七十周年記念事業実行委員会、1961年。
浜松市立中央図書館／編集編『浜松出身日本点字の創始者石川倉次: 日本点字制定100周年記念』浜松市立中央図書館、1990年。
広瀬浩二郎、嶺重慎『さわっておどろく！：点字・点図がひらく世界』岩波書店〈岩波ジュニア新書〉、2012年。ISBN 978-4-00-500713-4。

外部リンク

石川倉次〜日本点字の研究と発展に努めた生涯〜…ひろげよう人権（c）東京人権啓発企業連絡会
石川倉次…浜松情報BOX

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