国字

国字とは

国字とは、中国以外の国で独自に作られた漢字のことを指します。広義には、方言文字や職域文字、個人文字、仮名合字なども含まれますが、一般的には、特定の地域や文化の中で生まれた漢字を指します。国字の定義は学者によって異なり、調査が不十分なために、国字とされている文字にも疑義がある場合や、逆に漏れている文字も多く存在します。

日本の国字

日本の国字は、和字、倭字、皇朝造字、和製漢字などとも呼ばれます。その多くは、会意という漢字の構成方法に倣って作られています。古くから使われているものには、「峠（とうげ）」「榊（さかき）」「畑/畠（はたけ）」「辻（つじ）」などがあります。また、西洋文明の影響を受けて近代に作られたものには、「膵（スイ）」「腺（セン）」「腟（チツ、本来はシツ）」「瓩（キログラム）」「粁（キロメートル）」「竓（ミリリットル）」などがあります。

国字は主に訓読みで使用されますが、「働（はたらく・ドウ）」のように音読みを持つものや、「鋲（ビョウ）」「鱇（コウ）」のように音読みのみを持つものも存在します。「錻」には、「錻力」と表記した時の音読み「ブ」と、「錻」一字で表記する際に音読みから派生した訓読み「ぶりき」があります。また、「匂（匀＋ヒ）」のように、構成要素に片仮名が使われることもあります。

中国などに同じ字体の字があることを知らずに作られたと考えられる文字（「俥（くるま・じんりきしゃ）」「閖（ゆり・しなたりくぼ）」「鯏（あさり）」「鞄（かばん）」など）や、漢字に新たな意味を追加したもの（「森（もり）」「椿（つばき）」「沖（おき）」など）は、国字とは呼ばれず、その訓に着目して国訓（こっくん）と呼ばれます。中国などで意味が失われているもの（「雫（しずく）」など）は、中国で失われた意味が日本に残った可能性も否定できないため、国訓とも言えません。国訓のある文字に着目して、国訓字と呼ばれることもありますが、一般的ではありません。

日本で作られた国字が、他の地域に輸出される現象も見られます（「鱈（たら）」など）。また、姓の「畑（はた）」は中国でも日本人の姓を表記するために用いられ、『新華字典』などの字書にも収録されていますが、つくり（音符）の「田」の中国語音（tián）で読まれています。

「鰮（いわし）」「鱚（きす）」のように、中国にもともと同じ字体の字があり、日本で使われる意味を加えて使っている字もありますが、これらには、現在は使われなくとも、別に漢字本来の意味があるため、国字とは言えません。

「匁」は中国で古くから「銭」の異体字として使われていたため、国字ではないとされますが、辞典類ではしばしば国字として扱われています。このように、国字かどうかの判断は難しい場合があります。

朝鮮半島の国字

朝鮮半島でも、独自の漢字が作られています。日本の国字とは異なり、主に形声という漢字の構成方法に倣って作られています。朝鮮国字の場合、構成要素に漢字の他に、ハングルが使われます（ただしハングルそのものは構成要素が漢字とは共通しないので国字とは言えません）。日本と同様に、漢字に意味を追加したものを朝鮮では国義字といい、音を追加したものを国音字と呼びます。

ベトナムの国字

ベトナム語を表記するために作られた漢字もあります。しかし最近では字体の統一性がないなどの理由から、ラテン文字にその立場を譲っています。

その他の地域

女真文字や契丹文字も漢字に倣って作られましたが、これらの民族の国家が滅亡して長期間が経過したためか、国字とは呼ばれません。壮族の作った古壮字も漢字に倣ったものですが、中国の一少数民族であるためか、国字とは呼ばれません。西夏文字も構成方法は漢字を踏襲していますが、部品が漢字とは共通しないため、国字とは言えません。

まとめ

国字は、それぞれの地域の文化や言語を反映した独自の漢字です。その定義や範囲は学者の間でも意見が分かれる部分もありますが、それぞれの文化を理解する上で重要な要素と言えるでしょう。

関連項目

日本における[[漢字]]
神代文字
* 仮名交じり文

もう一度検索