石川桂郎

石川桂郎

石川桂郎（いしかわ けいろう、1909年8月6日 - 1975年11月6日）は、昭和期に活躍した日本の俳人、随筆家、小説家、そして編集者です。本名を石川一雄といい、東京の下町、芝区三田聖坂の理髪店の息子として生まれました。

生涯

石川桂郎は、御田高等小学校を卒業後、家業である理髪店を手伝いながら俳句を始めました。1934年には杉田久女に師事し、俳句の世界へ足を踏み入れます。1937年、石田波郷が創刊した俳句雑誌「鶴」に投句するようになり、1939年には同人となりました。また、小説家としての才能も開花させ、横光利一に師事しました。

父親の死後、家業の理髪店の店主となりましたが、人手不足のため文具店に転換。しかし、戦時下の状況から店員が次々と召集され、経営は困難となり廃業。その後は、工場や工事現場など、様々な職を転々としながら生活を送りました。

1942年には、理髪店時代を題材にした小説『剃刀日記』を発表。1943年には、斎藤玄が主宰する俳句結社「壺」に参加しました。1946年からは、鶴川村能ヶ谷（現在の町田市能ヶ谷）に居を構え、以降この地で創作活動を続けました。1948年には、水原秋桜子の「馬酔木」同人となります。

日産書房、目黒書店に勤務した後、『俳句研究』（俳句研究社）や『俳句』（角川書店）といった俳句専門誌の編集長を歴任。1960年には、神山杏雨が創刊した俳句雑誌「風土」の編集長に就任し、1964年には同誌の主宰となりました。

1955年には、小説『妻の温泉』で第32回直木賞候補となりました。1961年には、句集『佐渡行』などの業績が評価され、第1回俳人協会賞を受賞。1974年には、俳人たちの破天荒な生き様を描いた『俳人風狂列伝』で第25回読売文学賞（随筆紀行賞）を受賞しました。1975年には、句集『高蘆』以後の作品により第9回蛇笏賞を受賞しています。

代表的な句としては、「昼蛙どの畦のどこ曲らうか」「うらがへる亀思ふべし鳴けるなり」などがあり、市井の人々の生活を背景にした、軽妙で洒脱な句風が特徴です。

石川桂郎は、早くから心臓病を患っており、1956年には肺結核の手術も受けるなど、病と闘いながら句作を続けました。1974年には食道癌を発病し、1975年11月6日、食道癌のため死去。享年66歳でした。没後、1976年には遺句集『四温』が刊行されました。門下には、手塚美佐、神蔵器、島谷征良、細谷亮太などがいます。

人となり

石川桂郎は、自らも酒食と放言を好む、ある意味で風狂な人物でした。交友関係も広く、多くの文化人たちと親交がありました。

著作

句集
『含羞』 琅玕洞、1956年
『石川桂郎集』 八幡船社、1968年
『竹取』 牧羊社、1969年
『高蘆』 牧羊社、1973年
『四温』 角川書店、1976年
『石川桂郎集』 手塚美佐編、俳人協会〈脚註名句シリーズ〉、1994年
随筆・小説
『剃刀日記』 協栄出版社、1942年
『妻の温泉』 俳句研究社、1954年、講談社文芸文庫（2024年）
『俳人風狂列伝』 角川書店、1973年
『残照』 角川書店、1976年
『面会洒舌』 東門書屋、1978年

参考文献

金子兜太編 『現代の俳人101』 新書館、2004年
* 稲畑汀子、大岡信、鷹羽狩行監修 『現代俳句大事典』 三省堂、2005年

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