石川総茂

石川総茂：武略と治世の両面で領民に慕われた藩主

石川総茂は、17世紀後半から18世紀前半にかけて活躍した、江戸時代後期の重要な藩主です。伊勢神戸藩の第3代藩主として治世を担った後、常陸下館藩の初代藩主として新たな地でその手腕を発揮しました。彼の生涯は、藩政における優れた統治と、領民からの深い信頼によって彩られています。

若き藩主の時代と善政

寛文11年（1671年）、伊勢神戸藩第2代藩主・石川総良の長男として生まれた総茂は、幼少期から将来の藩主としての教育を受けました。貞享2年（1685年）、24歳の若さで家督を相続します。相続と同時に、弟である大久保忠明に3000石を分与するなど、藩政の安定化にも早くから着手しました。

総茂の治世は、領民にとって恵まれた時代でした。彼は有能で誠実な人物として知られており、その人柄と優れた政治手腕により、神戸藩は安定と繁栄を享受しました。47年間に及ぶ神戸藩主在任期間は、彼の統治能力の高さを示すものであり、領民からの信頼は厚く、その善政は広く称賛されたと伝えられています。

晩年と下館への移封

享保17年（1732年）、総茂は61歳の時、3000石の加増と常陸下館への移封を命じられました。これは、幕府からの信頼の表れでもありましたが、神戸藩の領民にとっては大きな衝撃でした。長年にわたる善政を敷いた総茂の異動を惜しみ、多くの領民が嘆願書を提出して、その留任を懇願したと伝えられています。この出来事は、総茂の人望の厚さを物語るエピソードとして、後世に語り継がれています。移封に際しては、伊勢国内の領地が常陸国真壁郡と河内国石川郡に移されました。

死去とその後

下館藩主として新たな地での治世を始めた総茂でしたが、移封からわずか1年後、享保18年（1733年）に63歳で亡くなりました。彼の死は、神戸、そして下館の領民に深い悲しみをもたらしたでしょう。跡を継いだのは養嗣子の石川総陽でした。

総茂の遺産

石川総茂の生涯は、藩主としての力量と、領民への深い愛情によって彩られたものでした。彼の行った善政は、長きに渡り領民の生活を支え、彼の死後も人々の記憶に深く刻まれたものとなりました。神戸藩、そして下館藩における彼の功績は、今もなお、歴史の中に輝き続けています。彼の在任期間は、藩の繁栄と安定をもたらし、多くの領民にとって忘れられない時代となったことでしょう。彼の死後も、その功績は語り継がれ、後世の藩主たちに大きな影響を与えたことは間違いありません。

系譜

父: 石川総良
母: 本多忠義の娘（側室）
正室: 石川昌能の娘
養子: 石川総陽（大久保忠増の七男）

総茂の系譜は、彼自身の出自だけでなく、養子縁組を通じて他の有力家系とのつながりも示しており、当時の政治情勢を考える上で重要な手がかりとなります。

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