石橋幸緒

石橋幸緒（いしばし さちお）

石橋幸緒は、1980年11月25日生まれ、東京都小金井市出身の元女流棋士です。日本将棋連盟でデビュー後、日本女子プロ将棋協会（LPSA）設立に参加し移籍。LPSAでは2代目の代表理事も務めました（2010年から2014年）。女流棋士としての師匠は清水市代女流七段であり、これは将棋界において、女流棋士が別の女流棋士の師匠となった唯一の事例として知られています。

幼少期と将棋との出会い

石橋氏は、生まれつき腸閉塞という重い病を抱えており、医師から予後を危ぶまれるほどの状態でした。4歳までベッドから離れることが難しく、身体的に病弱であったため、小学校から高校までは特別支援学校に通学しました。そのような状況の中、9歳の時に道端で見かけた将棋教室の看板が将棋と出会うきっかけとなります。この教室は、後に師匠となる清水市代氏の父親が運営しており、ここで将棋の手ほどきを受けるうちに頭角を現しました。

女流棋士としての歩みと活躍

1993年、当時歴代3位の年少記録となる12歳10か月で女流棋士としてプロの世界に入ります。若手時代は、同じ1980年生まれの千葉涼子、矢内理絵子と共に「花の80年生まれ・若手3羽ガラス」と称され、期待の女流棋士として注目されました。

タイトル獲得と歴史的瞬間

1999年、第21期女流王将戦五番勝負で師匠の清水市代に挑戦し、フルセットの末、3勝2敗で自身初のタイトルとなる女流王将を獲得しました。これは、将棋界全体を通して弟子が師匠からタイトルを奪取した最初の事例であり、さらに2連敗から3連勝でタイトルを奪い返すという、女流タイトル戦史上初の記録でもありました。この歴史的な勝利を皮切りに、女流王位を2期獲得するなど、通算で3期のタイトルを獲得しています。タイトル戦には合計12回登場し、女流王将戦、女流王位戦、倉敷藤花戦で挑戦の機会を得ました。LPSA移籍後の2007年には第18期女流王位を獲得し、LPSA所属棋士として初のタイトルホルダーとなりました。一般棋戦でも5回の優勝を飾るなど、実績を積み重ね、女流通算成績は359勝199敗、勝率.643という優れた成績を残しています。

LPSAへの移籍と代表理事として

2007年、日本将棋連盟を退会し、新たに設立された日本女子プロ将棋協会（LPSA）へ移籍しました。LPSAでは、2010年に中井広恵氏の後を継ぎ、第2代代表理事に就任します。代表理事在任中には、LPSAが独自基準で渡部愛氏を女流棋士3級と認定したことに端を発する、LPSAと日本将棋連盟・女流棋戦主催社との間で生じた対立において、LPSAの立場を強く主張する姿勢を見せました。この対立は、2013年1月に行われた第6期マイナビ女子オープン準決勝での里見香奈戦で、石橋氏が対局を放棄するという事態にまで発展しました。

多彩な活動と引退

石橋氏は将棋のみならず、多方面で才能を発揮しました。「石橋開雲」という名前で書家としても活動し、自身の書体を用いた将棋駒も手掛けています。また、親交のあった渡辺明氏が竜王のタイトルを初めて獲得した際には、免状への署名や揮毫のために書道の指導を行うなど、将棋界の枠を超えた交流もありました。一時は麻雀プロ団体である麻将連合に所属し、麻雀プロとしての活動経験もあります。

2014年1月31日、現役を引退しました。その後、同年2月25日付でLPSA代表理事の任期満了と同時にLPSAを退会し、将棋界から一線を退いています。

著書・メディア出演

自身の経験や将棋に関する複数の著書を出版しており、幼少期からの闘病や将棋との歩みを記した『生きてこそ光り輝く』は、2001年度の第13回将棋ペンクラブ大賞著作部門賞を受賞しました。また、NHK教育テレビ「将棋講座」の聞き手を務めたほか、2000年には日本テレビ系列のドキュメンタリー番組「NNNドキュメント2000」でその半生が取り上げられるなど、メディアへの出演経験もあります。

女流棋士としてタイトル獲得などの輝かしい実績を残しつつ、困難な幼少期を乗り越え、将棋以外の分野でも多才ぶりを発揮した石橋幸緒氏は、多くの人々にその存在を知られました。

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