石橋幹一郎

石橋幹一郎（1920-1997）は、世界的なタイヤメーカー、ブリヂストンの発展に大きく貢献した実業家です。ブリヂストン創業者の石橋正二郎の長男として、福岡県久留米市に生まれました。

旧制中学明善校、福岡高等学校を経て、東京帝国大学法学部を卒業。卒業後は海軍主計科の短期現役として勤務した後、1945年に高等文官試験に合格しますが、ブリヂストンタイヤに入社します。工場勤務で7年間実務経験を積み重ね、1952年には副社長に就任。その後、1963年には社長、1973年には会長に昇格しました。

社長、会長在任中は、ブリヂストンの国際化戦略を積極的に推進しました。1983年にはアメリカ・ファイアストン社の買収を主導し、ブリヂストンのグローバル展開を加速させました。それにより、ブリヂストンは世界的なタイヤメーカーとして確固たる地位を築くことになります。

経営手腕だけでなく、同族経営からの脱却にも尽力しました。会長就任時には、石橋家以外から社長を指名するなど、企業のガバナンス強化にも取り組んでいます。また、1979年には日本品質管理学会会長に就任するなど、日本の産業の発展にも貢献しました。

ブリヂストンでの活躍に加え、石橋幹一郎氏はプリンス自動車の役員も務めていました。1951年時点の役員名簿には取締役常務としてその名が記されており、プリンスの新車発表会などにも父である正二郎氏と共に姿を見せていました。

1985年にブリヂストン名誉会長に就任し、代表権を返上。その後も日本経済団体連合会副会長などを務め、経済界に貢献しました。私財を投じて久留米市に石橋美術館の別館を寄贈するなど、地元への貢献も積極的に行いました。1997年に相談役に就任した直後に77歳で亡くなりました。

その遺産はブリヂストン株式5000万株をはじめ、土地、建物、美術品などを含め、総額1646億円にのぼりました。相続税額は約1035億円となり、1998年当時としては最高額を記録しました。

家族関係としては、妹に鳩山安子、甥に鳩山由紀夫、鳩山邦夫がいます。また、妻・朗子の兄は作曲家の團伊玖磨、父はプリンス自動車社長を務めた團伊能であり、その祖父は三井合名理事長の團琢磨です。このような華麗な一族に生まれ育ち、その出自も注目を集めていました。

数々の勲章を受章しており、1981年には藍綬褒章、1986年にはベルギー王冠勲章コマンドール章、1989年にはフランス文芸勲章オフィシェ章を受章しています。1989年には久留米市名誉市民にも選ばれています。

石橋幹一郎氏は、ブリヂストンの発展に大きく貢献しただけでなく、日本の経済界、そして社会全体に大きな足跡を残した人物と言えるでしょう。その功績は、多くの書籍や資料によって今も語り継がれています。

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