團伊能

團伊能（だん いのう）について

團 伊能は、1892年に福岡県大牟田市に生まれた日本の実業家、政治家、美術史家です。実業界や政治界、さらには美術の分野でも著しい功績を残し、男爵位を持つ傑出した人物でした。

人物と経歴

彼は三井合名会社の理事長である團琢磨の長男として誕生しました。東京帝国大学の文学部美術史学科で学び、瀧精一の指導を受けました。さらに留学経験があり、海外の文化や芸術に対する見識も深めました。大学では助教授として多くの学生を指導し、坂倉準三や富永惣一といった著名な建築家を輩出するなど、その影響力を発揮しました。

團は1941年に設計された飯箸邸をはじめ、日本の近代建築の発展にも寄与しました。また、1932年には福岡市に教育事業費を寄付し、文化振興の先駆けとなりました。美術にも造詣が深く、自身が収集した作品には池大雅の『楼閣山水図』など国宝級のものも含まれています。1944年には東京国立博物館にこれらの収蔵品を寄贈しましたが、残念ながら1945年の東京大空襲で多くの美術品が失われました。

政治家としての活動

團は1946年に貴族院の男爵議員に当選し、公正会に所属して政治活動を行いました。その後、1947年に参議院議員に選出され、日本自由党および民主自由党にも属しました。参議院では2度当選を果たし、地方政界での影響力を確立しましたが、衆議院への鞍替えを希望し議員を辞職。その直後の選挙ではわずか53票差で落選するという悔しい結果に終わりました。

実業界での貢献

実業家としても、團伊能はブリヂストン自転車工業やプリンス自動車工業、九州朝日放送の社長を歴任しました。特に、父の別邸を改装して開業した箱根ハイランドホテルは、彼の経営手腕を証明するエピソードの一つです。また、文学や美術に対する情熱が高く、自らの子供たちにもこれらの文化に親しむ教育を施しました。

家族と系譜

团伊能の家族は知識人や実業家に恵まれた背景を持っており、彼の弟は生物学者の團勝磨です。また、妻・美智子は宮内省に勤務し、家庭内では文学や音楽を通じて交流を深めました。長男は作曲家としても活躍し、親子共作のCMソングも残しています。さらに、彼の家族は内閣総理大臣の鳩山一家とも遠縁の関係にあり、広がりのある系譜を形成しています。

晩年と功績

1965年には勲二等瑞宝章を受章し、1973年に80歳で亡くなるまで、日本の文化や教育に多大な影響を与え続けました。死去後、従四位から正四位に昇叙され、その功績を称えられました。彼の墓所は文京区の護国寺にあります。

著作

團伊能は美術に関する著作も多く、特に『伊太利亞美術紀行』や『概観歐洲藝術史』といった作品は、彼の深い美術への理解を示しています。また、翻訳書も手掛けており、幅広い知識と教養を持つ人物であったことが伺えます。

このように、團伊能は日本の近代史において、実業界や文化、政治の各分野で多大な影響を与えた人物であり、彼の功績は現在も高く評価されています。

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