石油発動機

石油発動機とは

石油発動機、またはオイルエンジンとは、灯油やケロシンを主な燃料とする内燃機関の一つです。その特徴は、ガソリンエンジンと似た構造を持ちながらも、灯油の特性を活かして動作することにあります。

概要と歴史

石油発動機は、通常のガソリンエンジンやディーゼルエンジンと異なり、主に気化器式の火花点火機関として機能します。これは、灯油がガソリンに比べオクタン価が低いため、圧縮比を高くして効率を上げることができないためです。しかし、その低価格と入手の容易さから、特に農業や漁業の分野で広く受け入れられました。1950年代までは日本国内でも100社近いメーカーが製造していたとされ、多くの地方の小規模メーカーでも生産されていました。

構造

この機関の基本的な構造はガソリンエンジンに類似し、燃料を霧化し、圧縮された混合気を点火プラグによって点火します。多くの場合、石油発動機は単気筒型で、低出力を目的としているため、鋳造部品を多く使用して製造されています。また、安定性を考慮し、水平シリンダー型の構造が採用され、木製や形鋼の土台に取り付けられ、可搬性も考慮されています。

冷却システムはホッパー水冷式が一般的で、そのためシリンダーの上部に位置するホッパーを通じて冷却水の蒸発を利用します。灯油は気化しにくい性質があるため、始動時にガソリンを使用することが必要となります。

使用と現状

過去には石油発動機は農業機械や漁業用エンジンとして活躍しましたが、1950年代以降、先進国においては効率の良いディーゼルエンジンやガソリンエンジンに取って代わられ、使用が減少しました。しかし、発展途上国では依然として生産・使用が盛んであり、小型の石油発動機が現存しています。このような発動機は通常、サイドバルブ型のガソリンエンジンをベースにしており、圧縮比をさらに低く設定することで灯油を使用します。

たとえば、日本のロビンのEY-Kシリーズなどがその一例で、2017年まで続いていました。また、これらのエンジンのコピー製品が中国で生産され、世界の低開発地域での利用が続いています。さらに、ヤマハ発動機も過去にガソリンを使って始動し、灯油で運転する2ストロークの石油発動機を製造しました。

現在の情勢

最近では、旧式石油発動機の復元が熱心に行われており、リペア業者も存在します。また、当時製造していた企業からは模型が発売されています。石油発動機は今でも製造が行われており、その基本的な構造はガソリンエンジンと大きな違いはなく、始動用のガソリンと運転用の灯油が分けられた燃料タンクが装備されていることが特徴です。

石油発動機は、一見現代のエンジンとは異なる古臭いものであっても、その構造には歴史と技術の深い背景があり、今もなお使用され続ける価値があるのです。

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