石津の戦い

石津の戦い：南朝武将北畠顕家の最期

延元3年/暦応元年5月22日（1338年6月10日）、現在の大阪府堺市周辺の石津において、南北朝時代を代表する激戦、「石津の戦い」が勃発しました。この戦いは、南朝方の武将・北畠顕家と、北朝方の高師直・師泰兄弟率いる軍勢が激突したことで知られています。石津合戦、堺浦合戦、堺浜合戦など、様々な呼び名を持つこの戦いは、南朝の敗北と、顕家を含む多数の武将の戦死という、南朝にとって大きな痛手となる結果に終わりました。

戦いの背景：後醍醐天皇の期待と顕家の奮闘

延元元年/建武3年（1336年）末、足利尊氏に対抗するため、後醍醐天皇は京都を脱出して吉野へ逃れました。そして、陸奥国多賀城にいた北畠顕家に、義良親王（後の後村上天皇）を奉じて上洛し、尊氏を討つよう命じます。

顕家は、北朝方の抵抗を克服しながら、霊山城から南下を開始。巧みな騎馬隊戦術で勝利を重ね、延元2年/建武4年（1337年）12月25日には斯波家長を滅ぼし鎌倉を制圧、さらに箱根を越え美濃国青野原の戦いで北朝方を破るなど、目覚ましい活躍を見せます。

敗北と転戦：顕家の最後の戦い

しかし、北朝方の主力軍が近江国から美濃国へと侵攻してきたことを知った顕家は、軍勢の立て直しのため伊勢国へ逃れました。大和国を一時占領するも、般若坂の戦いで北朝方の桃井直常に敗れ、再び窮地に陥ります。

その後、顕家は河内国、和泉国と転戦を繰り返し、戦力再建を図ります。弟の北畠顕信を救援するため兵を送りつつ、5月6日には石津・堺浦を焼き討ちにするなど、北朝方の勢力と激しく戦い続けました。

石津での決戦と悲劇：顕家の死

一方、高師直は尊氏の命を受け、兵1万8千を率いて顕家討伐に向かいます。5月22日、堺浦で両軍は激突。顕家軍は善戦しますが、寡勢に加え長征の疲労、そして瀬戸内海水軍の攻撃も受けるなど劣勢に立たされ、ついに石津で北朝軍に包囲されてしまいます。

200騎の兵を率いて決死の突撃を試みるも、顕家は落馬し討ち取られました。名和義高、南部師行など、南朝方の有力武将も相次いで戦死し、南朝軍は壊滅的な打撃を受けました。

戦いの影響：北朝の優勢と南朝への打撃

石津の戦いは、南朝にとって大きな痛手となりました。この敗北によって南朝は大きな勢力を失い、北朝、室町幕府は中央のみならず、顕家の勢力基盤であった奥州においても優位に立つこととなります。後醍醐天皇の忠臣として知られる北畠顕家の最期は、南北朝時代の大きな転換点となりました。顕家の死は、南朝にとって大きな損失であり、北朝優勢の流れを決定づけるものとなりました。

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