石黒敬七

石黒敬七: 日本の柔道家と文化人

石黒敬七（いしぐろ けいしち、1897年8月10日 - 1974年10月1日）は、日本の著名な柔道家であり、随筆家、古写真収集家でした。彼は講道館柔道の8段を取得し、大日本武徳会の10段を持つ他、多くの文化活動にも関与しました。彼は「ゆうもあくらぶ」の二代目会長でもあり、レジオンドヌール勲章を受賞したことから、その功績が広く認められています。彼の長男である石黒敬章は、彼の写真コレクションを受け継ぎました。

生い立ちと経歴

新潟県柏崎市で生まれた石黒は、七男であったため敬七という名前が付けられました。彼は中学校時代から柔道に傾倒し、18歳の時に講道館に入門。その後、早稲田大学に進学し、柔道部の主将として活動しました。1922年に大学を卒業した後、石黒は柔道の普及を目的に海外を周遊し、フランス、英国、トルコ、エジプトなどで柔道を教えました。ルーマニアでは国王から王冠章を授与されるなど、当時の柔道の普及に大いに寄与しました。

1925年には、松尾邦之助と共に『巴里週報』を創刊し、在住の日本人に向けて情報を発信しました。1933年に帰国し、講道館の審査員や『文藝春秋』の「風流座談会」に参加し、その際のユニークな語り口が評判となりました。

柔道家としての活動

石黒は早稲田大学入学と同時に講道館にも入門し、同年内に初段を取得。その後、段位を次々に上げていきました。彼は特に立技に優れており、主に小内刈や釣込腰といった技が得意でした。特に有名な技は「空気投」として知られています。この技は、相手が崩れた瞬間に自らの体を利用しながら相手を捻り落とすもので、石黒独特の技術として高く評価されています。

彼が海外で柔道を指導していた期間、特にフランスでは多くの教え子を持ち、柔道指南所を設立しました。また、異種格闘技戦に参加するなど、柔道の存在を広める努力を怠りませんでした。

文化活動と著作

柔道家としての傍ら、石黒は多くの文化活動にも参加しました。特に、時計や古写真の収集に熱心で、彼の収集活動は『写された幕末』という三巻本にまとめられています。この書籍は彼の収集した幕末の写真を紹介しており、文化的価値が高いと評価されています。その他にも『蚤の市』『巴里雀』『旦那の遠めがね』『柔道千畳敷』など多くの著作を残しました。

また、彼はNHKラジオの「とんち教室」に出演し、ユーモアあふれる解答で多くの聴衆に親しまれました。この番組での活躍を通じて、石黒敬七という名は広く知られるようになり、後に漫画『サザエさん』にも登場するなど、文化界でもその影響を及ぼしました。

晩年と業績の評価

1946年には講道館の8段を取得しましたが、講道館との関係が複雑だったため、その後の昇段が難航しました。特に、海外での活動が評価されなかったためとされ、彼は一時講道館から距離を置くようになります。しかし、後に大日本武徳会から10段位を授与され、評価が回復することになります。石黒は嘉納治五郎などの偉大な師を尊敬し、柔道を広めるための活動に生涯を捧げました。

石黒敬七の遺産は、現在も柏崎市に設けられた「石黒旦那ユーモア・コレクション・とんちン館」に集められ、彼の柔道や文化への貢献を讃える場となっています。彼の著作や活動は、今なお多くの人々に影響を与え続けています。

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