砂の上のロビンソン

砂の上のロビンソン

『砂の上のロビンソン』は、上野瞭による小説であり、それを原作としたテレビドラマ、映画、演劇作品です。小説は1985年から1986年にかけて京都新聞に連載され、1987年に新潮社から刊行されました。児童文学作家として知られていた上野瞭にとって、初の一般向け小説となります。

あらすじ

物語は、住宅展示場のモデルハウスに一年間住むことを条件に、その家と土地がもらえるという不動産会社の企画に当選したサラリーマン一家、木戸家の崩壊を描いています。主人公の木戸周平は、家族と共にモデルハウスでの生活を始めますが、それは不動産会社の広告戦略の一環として、「理想の家族」を演じることを強いられる日々でした。

毎日のように訪れる見学者の前で、彼らは完璧な家族を装わなければなりません。特に日曜日は、大勢の見学者の前で、決められた台本通りのセリフを喋りながら食事をするという苦痛を強いられます。さらに、近所や職場からの羨望と妬み、子供たちへのいじめが重なり、家族は徐々にストレスを募らせていきます。

ある日、周平は日曜日の食卓で、突如として台本にないセリフ「こんなの、砂の上のロビンソン・クルーソーみたいだよ」と口にします。そして、彼は衆人環視の中、家を飛び出し失踪してしまいます。数日後、非行グループに加担した次男は、毎晩ホームレスを襲撃して憂さを晴らしていました。ある夜、彼は負傷したホームレスに止めを刺そうと凶器を振り上げますが、その時、必死にホームレスを庇った人物が、変わり果てた姿の父・周平だったのです。

ドラマ

NHKのドラマ人間模様として、1988年1月9日から1月30日にかけて放送されました。

木戸周平：田中邦衛
木戸涼子：木の実ナナ
宮辺：麻生祐未

その他、小野隆、坂詰貴之、鎌倉幸らが出演しました。脚本は冨川元文、音楽は中村滋延が担当し、佐藤幹夫と広川昭が演出を手掛けました。

映画

1989年9月15日にATG配給で公開されました。

木戸周平：大地康雄
* 木戸涼子：浅茅陽子

その他、橋本俊一、鈴木武次郎、浅川奈月、高橋ひとみ、森本レオ、石橋蓮司、西川きよし、片桐はいりなどが出演しました。すずきじゅんいちが監督・脚本を務め、二橋潤一が音楽を担当しました。

『砂の上のロビンソン』は、理想の家族という虚像を演じることによって崩壊していく家族の姿を通して、現代社会における家族のあり方や人間関係の脆さを浮き彫りにした作品と言えるでしょう。

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