硫酸鉛鉱

硫酸鉛鉱：鉛の鉱石としての魅力と結晶構造

硫酸鉛鉱（アングレサイト、Anglesite）は、化学式PbSO₄で表される硫酸鉛(II)を主成分とする鉱物です。鉛鉱石として採掘されることも多く、地質学や鉱物学において重要な役割を担っています。その美しい結晶と、他の鉱物との関連性から、コレクターや研究者の間で高い関心を集めています。

産出と生成

硫酸鉛鉱は、主に鉛鉱床の表層部で発見されます。方鉛鉱（PbS、閃亜鉛鉱）が酸化される過程で生成される二次鉱物であり、大気中の酸素と反応して硫酸鉛鉱へと変化します。この生成過程は以下の化学反応式で表されます。

PbS + 2O₂ → PbSO₄

産出形態は多様で、粒状の集合体や、結晶が成長した美しい結晶として産出します。しばしば、元の未変成の方鉛鉱と共存している場合も見られます。興味深いことに、方鉛鉱の仮晶（偽の形）として産出することもあり、鉱物学的な研究において重要な手がかりとなります。

主な産地としては、イタリアのモンテポニ鉱山、モロッコのトゥイシット鉱山が有名です。日本においては、秋田県の尾去沢鉱山が重要な産地として知られています。鉱物の名称である「アングレサイト」は、イギリスのアングルシー島（Anglesey）の銅山で1783年に発見されたことに由来しています。

物理的性質と結晶構造

硫酸[鉛]]鉱は斜方晶系に属し、鉛イオン(Pb²⁺)のイオン半径がバリウム]や[ストロンチウム]イオンと近いため、[重晶石]や[天青石]と同様の結晶構造を持っています。しかし、硬度や[[密度はこれらとは異なります。硫酸鉛鉱の硬度は比較的低く、密度は高いという特徴があります。結晶格子定数は、a=8.45Å、b=5.38Å、c=6.93Åと測定されています。約864℃の高温下では、単斜晶系の同質異像に変化することが知られています。

硫酸鉛鉱は、重晶石などのアルカリ土類金属の硫酸塩と固溶体を形成します。その代表的な例として、北投石が挙げられます。北投石は重晶石と硫酸鉛鉱の固溶体であり、バリウムの含有量の方が鉛よりも多いのが特徴です。一方、鉛の含有量の方がバリウムよりも多い固溶体は、ワイズバッハ石と呼ばれています。

硫酸鉛鉱の色は、無色透明から白色が一般的ですが、黄色や飴色を呈するものも存在します。稀に緑色の結晶も見つかることもあります。劈開は完全ではなく、底面方向にのみ良好な劈開を示します。これは、重晶石や天青石と比較して劣る点です。

硫酸鉛鉱の重要性

硫酸鉛鉱は、鉛の重要な鉱石鉱物であるだけでなく、地球化学的なプロセスや鉱床生成の研究においても貴重な情報源となります。その生成過程や結晶構造、そして他の鉱物との関連性を解明することで、地質環境や鉱物生成メカニズムについての理解が深まります。さらに、硫酸鉛鉱は、その美しい結晶から、鉱物コレクターの間でも人気があり、標本としても高い価値を持っています。

まとめ

硫酸鉛鉱は、鉛の主要な鉱石鉱物であり、その産出、生成過程、物理的性質、結晶構造など、様々な面から興味深い鉱物です。他の鉱物との関連性も深く、地質学や鉱物学の研究において重要な役割を果たしています。今後、更なる研究によって、硫酸鉛鉱に関する知見が深まることが期待されます。

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