碁盤

碁盤とは

碁盤は、囲碁をプレイする際に使用する道具で、碁石を置くための盤です。表面には縦横に直線が描かれており、これらの線が交差することで格子状の模様が形成されています。この格子状の模様は、京都市内の通りなど、碁盤の目状と称されることもあります。

歴史

碁盤の起源は古代中国に遡るとされ、暦に使用されていた道具が転じたという説があります。漢景帝の陵墓からは、漢代のものと思われる17路の陶製碁盤が出土しています。また、正倉院には、装飾が施された「木画紫檀棊局」という碁盤が宝物として収蔵されています。北朝鮮の金剛山には、岩に刻まれた碁盤があり、仙人が囲碁を楽しんでいたという伝説も残っています。

碁盤の大きさについては、以下のような記録が残っています。

『囲碁式』（1199年頃）：縦1尺4寸8分、厚さ3寸4分
本因坊道悦の標準盤：縦1尺4寸5分、横1尺3寸5分、厚さ3寸9分
『大江俊矩記』（1807年）：縦1尺4寸8分、厚さ5寸3分

一般的に、碁盤は厚いほど高級とされており、稀に8寸や9寸といった厚さのものも存在します。現代では囲碁の国際化に伴い、卓上盤が主流となっています。コンピュータ囲碁プログラムの開発は、小路盤から発展していきました。

材料と製法

碁盤の材料には、榧（カヤ）、桂、イチョウ、ヒノキ、ヒバ、アガチス、スプルースなどが用いられます。特に榧製の碁盤は最高級品とされ、宮崎県産の柾目盤は非常に珍重されます。近年では、榧の木が希少になったため、中国・雲南省産の榧を使用したものが多くなっています。普及品には桂やイチョウが使われることが多く、安価なものではスプルース材が用いられます。

業者によっては、スプルースを「新カヤ」、アガチスを「新桂」と呼ぶことがありますが、これらは榧や桂とは異なる木材です。

また、木材を圧縮接着した積層材や、プラスチック、ゴム、金属製の碁盤も販売されています。金属製のものは、持ち運び用のマグネット碁石に対応しています。

碁盤の線は、ヘラや筆で描く方法（箆盛り・筆盛り）と、日本刀の刃を丸めて使用する太刀目盛りという伝統的な手法があります。太刀目盛りでは、漆を塗った刃先を盤面に押し付けて線を引くため、線に微妙な盛り上がりができます。視覚障害者向けには、この盛り上がりを大きくした碁盤や、交点に穴を開けた盤、碁石を固定する溝を彫った盤などがあります。

価格は材質によって異なり、数千円から1千万円を超えるものまで様々です。

形状は、床に直接置いて使用する足付盤と、テーブルで使用する薄い板状の盤があります。また、折り畳み式のものも存在します。卓上用の薄い板盤は、反りや歪みを防ぐために、複数の板を接いで作られることが多いです。これを接盤（つぎばん）または接合盤と呼びます。また、左右2枚の板を差し込んで1枚の盤にする差し込み盤もあります。木目の影響も大きく、柾目が珍重されます。

足付碁盤の裏側には、中央にへこみがあります。これは「へそ」と呼ばれ、木材の乾燥による歪みや割れを防ぎ、石を打った時の音の響きを良くする効果があります。薄い足付盤には、このへこみはありません。

また、碁盤の脚はクチナシの実の形を模しており、「他人の対局に口出しをしない」という意味が込められています。

装飾が施された蒔絵の盤や、中国では布製の碁盤も使われることがあります。

碁盤の種類と大きさ

碁盤上の線のことを「路」と呼びます。現代の標準は19路盤で、公式な対局でも使用されます。盤の大きさによって、布石、中盤、終盤の割合が変わりますが、同じルールで対局できます。

19路盤

縦横19本の線を持つ盤を19路盤と呼びます。交点の数は361、マス目の数は324です。プロの公式対局で使用され、特に断りがなければこの19路盤を指します。入門者には広すぎるため、中級者以上から使われます。

13路盤

縦横13本の線を持つ盤を13路盤と呼びます。交点の数は169、マス目の数は144です。19路盤に比べて隅・辺・中央の境界が曖昧ですが、全体を把握しやすく、初心者が実戦に近い感覚を学ぶために使われます。上級者の練習にも有用とされ、プロ棋士による普及活動も行われています。

9路盤

縦横9本の線を持つ盤を9路盤と呼びます。交点の数は81、マス目の数は64です。入門者へのルール説明や詰碁、研究に使われます。13路盤以上とは異なる定石や手筋があり、短時間で決着がつくため、一定の棋力を持つ人でも楽しめます。プロ棋士の中には、9路盤を専門的に研究する人もいます。

その他の碁盤

21路盤: 19路盤より広く、一部の愛好家が利用。
17路盤: 古代中国で主流だったとされる。チベットのミマンでは、この盤で独自のルールが残る。
15路盤: 連珠で使用され、「連珠盤」とも呼ばれる。囲碁では海外の初級者が利用。
11路盤: 9路盤でルールを覚えた初級者の指導に利用。
7路以下: 入門者へのルール解説や研究用。小学校の授業にも使われる。

大盤

解説に用いられる大型の盤です。壁にかけたり、パソコンの画面をスクリーンに映したりして使用します。タイトル戦での大盤解説会や、囲碁教室での指導に使われます。

文化

深曽木の儀

皇室では、七五三の儀式として、碁盤から飛び降りる「深曽木の儀」が行われます。これは、碁盤の目のように真っ直ぐ育つことを願うものです。

嫁入り道具

かつては、貴族や大名の娘が嫁入り道具として、蒔絵を施した碁盤、将棋盤、双六盤を持参する風習がありました。

逸話

源義家と碁盤: 源義家が法師の妻のもとに忍び込んだ際、待ち伏せしていた法師が置いた碁盤を飛び越えて侵入したという逸話があります。
碁盤忠信: 源義経の家臣である佐藤忠信が、碁盤を持って戦ったという伝説から、人形浄瑠璃や歌舞伎の題材にもなっています。

参考文献

[囲碁]]の道具 - 日本棋院: [https://www.nihonkiin.or.jp/

関連項目

碁石
将棋盤
チェスボード
* 条里制

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