磐井郡

磐井郡：歴史と行政区分をたどる旅

はじめに

磐井郡は、岩手県に存在した郡です。現在の地名では、一関市、西磐井[[郡]]平泉町、奥州市の一部にその歴史的領域を見出すことができます。本稿では、平安時代から明治時代にかけての磐井郡の歴史的変遷と、複雑な行政区分について詳細に解説します。

古代から中世へ：郡の成立と変遷

802年、坂上田村麻呂による胆沢城築城と併せて、胆沢三郡（磐井郡、胆沢[[郡]]、江刺[[郡]]）が成立しました。このことは、磐井郡が東北地方の古代史において重要な位置を占めていたことを示唆しています。10世紀には、多賀城の支配下に編入されるなど、その勢力範囲は変遷を繰り返しました。奥州合戦以降は、葛西氏の領地となり、豊臣秀吉の奥州仕置までその支配が続きました。

近世：仙台藩と一関藩の支配下

1591年、伊達政宗の所領となりました。江戸時代を通じて、磐井郡は仙台藩およびその支藩である一関藩の支配下に置かれ、86か村を擁する大郡として発展しました。その広大な面積を管理するため、東山、西磐井、流の三区に分割統治されました。

幕末と明治維新：藩領の変遷

「旧高旧領取調帳」によると、幕末期の磐井郡は、仙台藩領49か村、一関藩領37か村から構成されていました。明治維新後、仙台藩の降伏、陸奥国の分割、そして上野沼田藩、上野前橋藩による一時的な管轄を経て、最終的に胆沢県、一関県（第1次・第2次）、水沢県、磐井県と、その所属は変遷を繰り返します。1875年には磐井県に改称され、1876年には岩手県に編入されました。

明治時代の郡区町村編制法と郡の分割

1878年、郡区町村編制法施行により、行政区画としての磐井郡が正式に発足しました。しかし、その広大な面積を維持することは難しく、1879年には東山地区34か村を以て東磐井郡、西岩井・流地区26か村を以て西磐井[[郡]]が新設され、磐井郡は廃止されました。

磐井郡の構成村落

磐井郡を構成していた各村落は、仙台藩領と一関藩領に分けられていました。東山地区、西岩井地区、流地区のそれぞれに、多数の村落が存在し、複雑な行政区分を形成していました。これらの村落の変遷については、東磐井郡、西磐井[[郡]]それぞれの詳細な史料を参照する必要があります。


東山地区：舞草村、相川村、薄衣村、門崎村、松川村、長坂村、田河津村、曽慶村、大原村、渋民村、猿沢村、築館村、天狗田村、中川村、鳥海村、千厩村、濁沼村、黄海村、西口村、藤沢村、新沼村、増沢村、砂子田村、保呂羽村、大籠村、上折壁村、下折壁村、浜横沢村、釘子村、津谷川村、小島村、長部村、赤生津村、母体村など。仙台藩領34か村と一関藩領12か村から構成されていました。

西岩井地区：山目村、中里村、赤荻村、前堀村、樋口村、細谷村、作瀬村、五串村、猪岡村、平泉村、中尊寺村、達谷村、戸河内村など。仙台藩領13か村と一関藩領11か村から構成されていました。

流地区：西永井村、東永井村など。仙台藩領2か村と一関藩領14か村から構成されていました。

結論

磐井郡の歴史は、古代からの東北地方の政治的・地理的変遷、中世の争乱、そして近世の藩政、明治維新と近代国家建設という日本の歴史的転換期を反映しています。その複雑な行政区分は、現代に残る地名や地域社会の構造にも影響を与えていると言えるでしょう。

参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典』 3 岩手県、角川書店、1985年2月7日。
『岩手県史』第7巻〔近代編2〕（岩手県、1962年）
* 『千厩町史』第四巻（岩手県東磐井郡千厩町、2000年）

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