磬

磬（けい）について

磬（けい）は、古代中国で広く使用されていた体鳴楽器で、主に石や玉、または銅から作られています。独特の「ヘ」の字型をしており、通常は吊り下げて使用し、バチで叩くことで音を出します。磬には、単独で音を出す「特磬」と、複数の磬を並べて使用することで旋律を奏でる「編磬」がありますが、後者の方が一般的です。八音の一つである「石」に分類され、古代から続く中国の雅楽においても重要な位置を占めています。

構造と形状

磬の漢字構成には、「磬」や「聲（声）」という字の上部がバチを持って吊るしている形を表しているとされています。この楽器自体は原始的なもので、元々は農具を叩いていたという説もあります。時代によって磬の形状は異なり、殷王朝までのものは上部が弧を描き、下部はほぼ直線的な形状をしています。一方、西周から戦国時代のものは上部に角がありながらも、下部は弧状を保つ特徴があります。また、漢の時代になると上下両方に角が設けられるようになりました。

歴史的背景

磬の起源は非常に古く、考古学的には山西省襄汾県で発見された新石器時代の遺跡にルーツがあります。また、青銅器時代の遺跡からも打製石器の石磬が見つかっており、これらは磬が長い歴史を持つ楽器であることを示しています。特に、安陽武官村から出土した虎紋が刻まれた殷の大石磬は、280.7Hzという音程を持つ精巧なものであり、当時の音楽文化を知るための重要な資料となっています。

戦国時代には宮廷音楽において、編鐘と共に編磬が特に重視されました。これらは宴楽の場で用いられ、当時の文化を表現していました。山東省沂南県の後漢時代の画像石にも編磬が描かれていることから、この楽器が古くから続いていることが証明されています。

隋唐時代になると、雅楽だけでなく、燕楽でも編磬が使用されていました。清の時代まで長い間、この楽器は雅楽の一部として活躍してきました。また、韓国の伝統音楽でも中国の編磬に由来する「編磬（편경）」が用いられています。

日本における磬

日本では仏教の法要の際に「磬」が用いられています。これは、古代の中国の磬に似た形を持っていますが、材質は石ではなく鋳銅で作られています。制作は奈良時代から始まり、平安時代には密教での必須仏具となっていきました。その後、他の宗派でも使用されるようになりました。仏教寺院では、「鏧子」という楽器が用いられ、この楽器は古代中国の磬とは異なるものです。また、道教の儀式でも似たような形の磬が使用されています。

まとめ

磬はその長い歴史と多様な形状から、中国古代音楽において重要な役割を果たしてきました。そして、さまざまな文化や地域へ影響を与え続けているのです。古代から現代に至るまで、磬は楽器だけでなく、文化的および宗教的な象徴としても大切にされています。

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