編鐘

編鐘（へんしょう）について

編鐘は、古代中国で使われた打楽器で、音高の異なる複数の鐘を特別な枠に吊るして構成されています。この楽器は青銅で作られており、中国の伝統音楽で「金」に分類される楽器の一つにあたります。

歴史的背景

編鐘は約2500年前の春秋時代に出現し、当時の上流社会で用いられました。この楽器は、音楽だけでなく権威や権力の象徴ともなり、特に宮廷の儀式や重要な行事で使用されました。鐘の数には16、17、13、32など多様な組み合わせがあり、その音色によって異なる印象を与えます。

漢代以降はこの楽器の使用が減少しましたが、宮廷行事では重要な役割を果たし続けていました。また、明代や清代にも金編鐘が製作され、文化的な価値が引き継がれました。

重要な出土品

特に1978年に湖北省随県の戦国時代初期の遺跡で発見された曾侯乙墓から出土した編鐘は、注目されています。この出土品には65点からなる編鐘が含まれており、最大のものは高さ153.4cm、総重量2567kgにも達します。これに加え、編磬や鼓、瑟、排簫などの楽器も保存状態が良く、音楽研究の貴重な資料となっています。

この曾侯乙編鐘は、1つの鐘が2つの音を発する能力を持ち、音階は七音音階で構成されており、音域は5オクターブ半にも及びます。中心音域では、12の半音を網羅することができ、音楽的に非常に多様な表現を可能にします。この編鐘は国家一級文物として、中国の国宝に指定されています。

編鐘の伝播

編鐘はその後も高麗を経て、日本にも影響を与えました。1116年には北宋から高麗に伝わり、祭礼の音楽には欠かせない楽器として重宝されました。日本には13世紀に伝来したとされ、栃木県の日光東照宮にはその時代の編鐘が保存されていることが知られています。

現代における役割

近年では古楽器としての編鐘の再現が進んでおり、2008年の北京オリンピックではメダル授与式での演奏にも使用されました。伝統音楽としての演奏が盛んに行われ、古代中国の豊かな音楽文化の一端を体現しています。

編鐘の音階

編鐘の音階は伝統的な五声の四つを基に構成されています。具体的には、「宮（C）」、「徴（G）」、「商（D）」、「羽（A）」の4つの音が基本階名となります。ここから完全5度を取り、各音に変化を加えた新たな音名が与えられます。このように、編鐘の音名は、基本的な階名に「角」や「曽」を付け加えることで変音を表現する独自の体系を持っています。

このように、編鐘はただの楽器ではなく、古代の文化や歴史を語る重要な存在であり、現代においてもその魅力は色あせていません。

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