社会民主党 (イギリス)

イギリス社会民主党：労働党からの分離と自由党との合併

1981年から1988年まで存在したイギリスの社会民主党(SDP)は、中道左派の社会民主主義政党として、イギリス政治史に独特の足跡を残しました。労働党内における左右対立がその誕生の背景にあり、ヨーロッパ共同体(EC)加盟問題を巡る意見の相違が大きな要因となりました。

労働党からの分裂：急進中道派の台頭

1970年代後半、労働党は野党であり、党内では左右両派の対立が激化していました。特にEC加盟問題では、加盟を支持する穏健派と反対する急進左派の対立が深刻化。この対立の中心にいたのが、元外相で欧州委員会委員長を務めていたロイ・ジェンキンスでした。彼は1979年のリチャード・ディンブルビー講演で「急進中道」勢力の結成を訴え、党内左派の反発を招きました。

ジェンキンスの主張に賛同するデイヴィッド・オーウェン、ウィリアム・ロジャーズ、シャーリー・ウィリアムズといった重鎮議員たちは、党執行部の左傾化に反発。彼らは「三人組(ギャング・オブ・スリー)」と呼ばれ、公然と党の方針に反対しました。後にジェンキンスも加わり「四人組(ギャング・オブ・フォー)」となり、新党結成へと動き出しました。労働党指導部の妥協姿勢の欠如も、分裂の大きな原因の一つと言われています。

社会民主党の結成と選挙連合

1981年3月、社会民主党はついに結成されました。創設メンバーには、閣僚経験者ら14名が名を連ね、直ちに選挙活動を開始しました。初代党首には、全党員投票によってジェンキンスが選出されました。

既存の自由党と選挙協力を進め、「SDP-自由同盟」を結成。マーガレット・サッチャー保守党政権下、労働党の左傾化とサッチャー政権の強硬な新自由主義政策への反発が国民の間で高まる中、社会民主党と自由党の連合は、一時的に保守党、労働党を上回る支持率を獲得する勢いを見せました。補欠選挙でも勝利を重ね、勢力を伸ばしていきました。

1983年総選挙と自由党との合併

1983年の総選挙では、社会民主党と自由党は共同マニフェストで臨みました。得票率は25.4%と、労働党(27.6%)に肉薄する結果となりましたが、議席数は両党合わせて23議席にとどまりました。これは、野党分裂が結果的に保守党の議席増加に貢献したことを意味します。

1987年の総選挙でも議席数を伸ばすことができず、1987年には自由党からの提案を受け、両党は合併することで合意。1988年3月、「社会自由民主党」(後に自由民主党と改称)が誕生しました。しかし、オーウェンなど合併に反対する議員は新たな社会民主党を結成しましたが、短期間で解散しました。現在も同名の社会民主党が存在しますが、その歴史は別個に語られるべきでしょう。

社会民主党の遺産

社会民主党は短命に終わったものの、イギリス政治に大きな影響を与えました。労働党の内部対立を鮮明にし、新自由主義政策に対する批判を強めました。また、自由党との合併は、イギリスにおける中道勢力の再編に重要な役割を果たしたと言えるでしょう。その存在は、イギリス政治史における一つの重要な転換点として位置づけられています。

参考文献

Hug, Simon (2001) Altering Party System, The University of Michigan Press, ISBN 0-472-11184-1.
間柴泰治「二大政党制の中のイギリス自由民主党」『レファレンス』第641号、2004年6月。

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