祇園水門

祇園水門：太田川の生命線

広島市を流れる太田川放水路に位置する祇園水門は、広島デルタの頂点付近に建設された重要な水門です。近隣の大芝水門と連携し、太田川の流量調節や洪水防御、さらには河川環境の保全に重要な役割を担っています。

祇園水門の建設は、昭和7年に開始された太田川流域の改修事業の一環として計画されました。当初は固定堰のみの設置が予定されていましたが、戦後の計画見直しを経て、水門の設置が決定されました。その背景には、適切な水配分、塩水遡上の抑制、そして河川水質の浄化といった喫緊の課題がありました。昭和36年から建設工事が開始され、昭和40年に完成を迎えました。

大芝水門とは異なり、祇園水門は車両の通行ができません。下流側には国道54号線が通り、祇園大橋が架かっています。最寄りの駅はJR安芸長束駅です。水門の右岸側には歴史ある長束八幡宮が鎮座しています。

地域住民にとって祇園水門は、単なる水門以上の存在です。毎年、端午の節句の頃には、国土交通省によるPR活動の一環として、地元からの寄付によって集められた多くのこいのぼりが水門に掲揚されます。この光景は、地域住民にとって春の風物詩として親しまれ、地域全体の活気を感じさせる象徴となっています。

さらに、祇園水門の上流、行森川合流地点までの太田川中流域約18キロは、「名水百選」にも選ばれています。この美しい自然環境は、祇園水門が担う河川環境保全の成果を象徴的に示しています。清らかな水と豊かな自然が調和するこの地域は、人々の憩いの場として、また貴重な自然遺産として大切に守られています。

祇園水門の諸元は次のとおりです。

堰上高：3.10m
敷高：TP 0.00m
固定部幅：143.70m
可動部：鋼製ローラーゲート 3門 (各幅32.00m)

平水時においては、3門あるゲートのうち1門のみを開門し、流量調整を行います。増水時には全てのゲートを上昇させ、その際にはサイレンが鳴らされて周辺住民に注意を促します。この仕組みは、洪水時の安全確保に大きく貢献しています。

祇園水門は、単なる治水施設としてだけでなく、地域住民の生活に密着し、自然環境と調和した存在として、広島の街を見守っています。その存在は、太田川の豊かな自然と、人々の暮らしを繋ぐ重要な役割を担っていると言えるでしょう。

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