祖心尼

祖心尼（そしんに）

祖心尼（そしんに、1588年 - 1675年）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての女性です。伊勢国岩手城主・牧村利貞の娘として生まれ、幼名は「おなあ」、「おのう」、「古那」とも呼ばれました。彼女は、波乱に満ちた生涯の中で、前田利長の養女、大奥での活躍、そして尼僧としての晩年を送りました。

生い立ちと前田家時代

天正16年（1588年）、祖心尼は牧村利貞の娘として誕生しました。しかし、父は豊臣秀吉の文禄の役に出陣し、文禄2年（1593年）に亡くなります。父と親交のあった前田利家の導きで、加賀藩前田家に引き取られ、利家の長男である前田利長の養女となり、同じく利長の養子となった前田利常と共に養育されました。その後、前田家の分家である小松城の前田直知（利家の長女・幸の息子）に嫁ぎ、二人の男児をもうけますが、突如離縁を言い渡されます。この離縁の理由は諸説ありますが、祖心尼がキリシタン大名の高山右近と親交があったためとも言われています。

離縁後の転機

離縁後、幼い子を連れて、父が建立した京都・妙心寺雑華院の住職である叔父の一宙禅師のもとに身を寄せます。この時、妙心寺寿聖院にいた石田三成の長男、宗亨（石田重家）に帰依し、禅を学びました。その後、会津藩主蒲生忠郷の重臣、町野幸和と再婚し、娘のおたあをもうけます。慶長18年（1613年）には、幸和と親しかった仕置家老の岡重政が忠郷の母との対立で切腹に処されると、重政の息子である吉右衛門を庇護し、後に娘のおたあと結婚させています。

寛永4年（1627年）、藩主・蒲生忠郷が亡くなると蒲生家は改易され（60万石から24万石に減封の上、伊予松山へ国替え）、幸和は伊予へは同道せず浪人となりました。

江戸での活躍と大奥入り

浪人となった一家は江戸に移住し、祖心尼は多くの書物に触れて知識と教養を深めます。その教養を見込まれ、叔母で当時大奥を取り仕切っていた春日局から補佐役を依頼され、大奥に出仕することになりました。大奥では、雑華院や寿聖院での経験を生かし、女中に禅の心を説いて聞かせるなど、意識向上に尽力しました。また、春日局の要望で自身の孫娘（おたあと岡吉右衛門の子）であるお振の方を春日局の養女として大奥に入れ、家光の側室としました。お振の方は、寛永14年（1637年）に家光の長女・千代姫（後に尾張藩主徳川光友の正室）を産みますが、産後の経過が良くなく、祖心尼が看病に当たります（お振の方は、寛永17年（1640年）に死去）。

出家と済松寺の建立

このような日々を送る中、家光の勧めもあり寛永20年（1643年）に出家し、祖心尼と名乗るようになりました。祖心尼は家光にも禅を説き、家光は彼女に幕府祐筆の大橋龍慶屋敷跡を寺領として寄進し、済松寺を建立させました。家光は臨終の際にも祖心尼を呼び、「わが身は日光に葬られても、わが心はこの済松寺に留まる」と言い残したと伝えられています。

晩年

家光の死後、祖心尼は大奥を去り、余生を済松寺で過ごしました。彼女は、その波乱に満ちた生涯を通じて、多くの人々に影響を与え、特に大奥の女性たちに精神的な支えを与えました。

関連情報

臨済宗済松寺：祖心尼が開基した寺院。
春日局：祖心尼の叔母であり、大奥を取り仕切った人物。
* 徳川家光：江戸幕府3代将軍で、祖心尼の禅の教えに帰依した。

外部リンク

済松寺ホームページ 祖心尼.net

もう一度検索