祖承訓

祖承訓（そ しょうくん）は、その詳しい生没年は明らかではありませんが、中国の明王朝期に活躍した一人の武将として歴史に名を残しています。彼は、日本と朝鮮、そして明王朝を巻き込んだ大規模な戦役である「万暦朝鮮の役」（日本では「文禄・慶長の役」として知られています）において、明朝が初めて朝鮮半島へ派遣した援軍の将軍の一人として、この戦乱の初期段階から深く関与しました。

「文禄の役」として知られる第一次朝鮮の役が始まった頃、祖承訓は明の要衝である遼陽の副総兵という役職に就いていました。日本の豊臣秀吉による朝鮮侵攻が急速に進む中、明朝廷は属国である朝鮮を救援することを決定し、祖承訓に対し出兵を命じます。文禄元年（1592年）7月16日、彼は5000人規模の兵を率いて鴨緑江を渡り、当時日本の支配下にあった平壌の奪還を目指しました。

当時の平壌には、日本の主力部隊がすでに朝鮮半島南部へと移動していたため、少数の日本軍守備兵が残るのみでした。祖承訓はこの状況を見て、平壌への奇襲攻撃を仕掛けます。しかし、その攻撃は予期せぬ日本軍守備兵たちの決死の防戦によって阻まれ、退けられてしまいました。さらに、この明軍の動きをいち早く察知し、急遽駆けつけた日本の主要な武将たち、すなわち小西行長、宗義智、大友義統、立花宗茂、黒田長政らが指揮する追撃部隊によって、祖承訓の率いる部隊は壊滅的な打撃を受けます。祖承訓自身も、多大な犠牲者を出した部隊とともに、かろうじて本拠地である遼陽へと敗走せざるを得ませんでした。

平壌での苦い敗戦を経験した後、明朝はより大規模な援軍の朝鮮半島への派遣を決定します。祖承訓は、この本格的な明軍の展開に伴い、再び従軍することになります。この第二次派遣軍の一員として、彼は朝鮮半島の各地を転戦することとなりました。例えば、「第二次晋州城攻防戦」が激しく行われている最中、祖承訓は戦場から比較的近い咸陽付近に駐屯していましたが、孤立無援の状態にあった晋州城の救援に自ら動くことはありませんでした。

そして、「慶長の役」と呼ばれる第二次朝鮮の役が始まると、祖承訓は董一元が指揮を執る明軍の中路軍に組み込まれ、戦線に加わります。彼はこの時期に行われた重要な戦いの一つである「泗川の戦い」に参戦しましたが、この戦いもまた明・朝鮮連合軍にとって厳しい結果となり、敗北を喫しました。祖承訓の軍歴は、万暦朝鮮の役における明軍、特に初期段階での苦戦や、戦局の中で必ずしも有利に進められなかった状況を映し出すものと言えるでしょう。

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