董一元

董一元（とう いちげん、生没年不詳）は、明代の軍人であり、その生涯は戦乱と功績に彩られています。

初期の軍歴と活躍

董一元は宣府前衛（現在の河北省張家口市一帯）を本貫とし、宣府游撃将軍であった董暘の子として生まれました。兄には、同じく軍人として活躍した董一奎がいます。嘉靖年間（1522年 - 1566年）に薊州鎮（現在の天津市薊州区一帯）の游撃将軍に任じられ、軍人としてのキャリアをスタートさせました。1564年、チャハルのトゥメン・ジャサクト・ハーンやココチュテイ・タイジらが薊州鎮に侵攻した際、総兵官の胡鎮がこれを撃退しましたが、この戦いで董一元の功績が最も大きかったとされています。その功績により、彼は三級の俸禄を超えて与えられ、石門寨参将に転任しました。1567年には、棒槌崖でチャハルの別働隊を破り、再びその功績が認められて二級を進められ、副総兵に昇進、古北口に駐屯しました。その後、宣府へと移駐しました。

昌平、宣府、薊州鎮での活躍

1583年、董一元は都督僉事として昌平総兵官に任命され、その後、宣府総兵官に転じました。1587年には、薊州鎮総兵官として山海関に駐屯しましたが、長年の勤務を経て弾劾を受け、一時的に罷免されました。1590年、鄭洛が経略洮河となった際、董一元はその命を受け西寧で練兵を行いました。青海部長の火落赤が侵入すると、西川でこれを撃破し、多くの捕虜を出す戦果を上げました。その後、副総兵として寧夏を守り、延綏総兵官に抜擢されます。

寧夏の乱とオルドス部討伐

1592年、寧夏で哱拝の乱が発生すると、オルドス部の諸部長が哱拝を支援しました。董一元はオルドス部の西進に乗じて、軽騎でオルドス部の土昧の根拠地を急襲し、130もの首級を挙げ、家畜を鹵獲して凱旋しました。その功績により、署都督同知に進み、入朝して中府僉事となりました。

遼東での活躍とモンゴル族との戦い

1594年、董一元は遼東総兵官に任じられ、遼東の防衛に尽力しました。当時、泰寧衛の速把亥が明軍に殺害され、その次男の把兎児が復讐を企てていました。叔父の炒花や姑の壻花が把兎児を支援し勢力を拡大。チャハルのブヤン・セチェン・ハーンも把兎児と連携し、明の辺境を頻繁に侵犯していました。1595年、ブヤンは一克灰正・脳毛の諸部と合流し、広寧への侵攻を宣言。把兎児は炒花、花大、煖兎、伯言児らを引き連れて旧遼陽に宿営し、武州、錦州、義州への侵入を企てていました。董一元は、数の多いブヤンよりも把兎児と炒花の方が厄介と判断し、副将の孫守廉を右屯に派遣してチャハルを牽制させ、自らは大軍を率いて鎮武外に潜伏。空の陣営を構築して把兎児らを待ち受けました。把兎児らは空の陣営に突入し、明軍が臆病風に吹かれて退却したと判断して深入りしたところを伏兵に襲撃され大敗。把兎児らは北へ敗走し、明軍は白沙堝まで追撃、540人余りを捕斬し、馬やラクダ2000頭を鹵獲しました。伯言児は戦死し、把兎児も負傷しました。翌日、ブヤンが右屯を攻撃しますが、孫守廉らが堅守して退却。董一元は左都督に進められ、太子太保の位を加えられました。敗戦後、モンゴル諸部はその多くが明に帰順しましたが、把兎児や炒花、ブヤンらは再戦を企図。董一元は楊鎬らとともに先手を打って把兎児の根拠地を襲撃し、把兎児を敗死させました。

文禄・慶長の役と晩年

1596年10月、董一元は病のため帰郷し、王保が後任として遼東総兵官となりました。1597年、日本軍が朝鮮に再侵攻（慶長の役）すると、董一元は総督邢玠の麾下に属し、軍事に参与しました。1598年4月、李如梅に代わって禦倭総兵官に就任しました。同年9月、明軍は四路に分かれて進軍し、董一元は中路を担当しました。彼は晋州を攻略し、望晋を降伏させ、永春・昆陽の二寨を連破しました。さらに川上忠実が守る泗川古城を攻略しましたが、游撃の盧得功が戦死しました。泗川新城に籠城する島津義弘らを攻撃するも、明軍の陣中で砲が爆発、日本軍の反撃を招き、明軍は総崩れとなりました（泗川の戦い）。董一元もまた晋州に退却し、敗戦の責任を問われ宮保を剥奪、三階級降格となりました。豊臣秀吉の死後、日本軍が朝鮮から撤退したため、1599年3月に董一元は朝鮮から軍を返しました。同年9月、元の位階に戻されました。長年の軍務を終え、その後、死去しました。

董一元は、明代において数々の戦役で武功を挙げた将軍であり、特に北辺の防衛とモンゴル族との戦いでその名を知られています。また、文禄・慶長の役にも参戦するなど、その生涯は戦乱に明け暮れたものでした。

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