祝典序曲 (イベール)

祝典序曲 (Ouverture de Fête)

ジャック・イベールが作曲した「祝典序曲」は、演奏会用序曲として知られています。1939年、日本政府が皇紀2600年を祝うためにフランス政府を通じて作曲を依頼し、イベールは1940年4月にかけてこの曲を完成させました。当時、彼はローマ大賞受賞者の留学先として有名な、ローマのヴィラ・メディチで館長を務めていました。

初演と改訂

初演は1940年12月、東京歌舞伎座で行われ、山田耕筰の指揮によって演奏されました。その後、イベールは1941年にこの作品を改訂し、翌1942年にコンセルヴァトワール演奏協会で、シャルル・ミュンシュの指揮によって改訂版が初演されました。この改訂によって、楽曲はより洗練されたものとなりました。

楽器編成

「祝典序曲」は、以下の楽器編成で演奏されます。

フルート3（第3奏者はピッコロ持ち替え）
オーボエ2
コーラングレ
クラリネット2
バス・クラリネット
アルト・サクソフォーン
ファゴット2
コントラファゴット
ホルン4
トランペット4
トロンボーン3
チューバ
ティンパニ
打楽器（小太鼓、大太鼓、シンバル、タムタム）
グロッケンシュピール
ハープ2
弦五部

この編成からもわかるように、オーケストラの各楽器が効果的に使用され、色彩豊かでダイナミックな響きを生み出しています。

楽曲構成

この楽曲は、アレグロ・モデラート、4分の4拍子の力強い序奏で幕を開けます。この序奏は、これから始まる壮大な音楽への期待を高めます。続いて8分の6拍子に変わり、チェロとコントラバスが重厚でありながらリズミカルな主題を奏で始めます。この主題は徐々に他の楽器へと広がり、曲全体を盛り上げていきます。

音楽が頂点に達すると、今度は4分の3拍子となり、コラール風でありながらジャズの要素も感じられる新しい主題が登場します。この対照的な主題の提示が、楽曲に多様な表情を与えています。その後、最初に登場した主題が再び現れ、曲は一時的に静まります。そして、4分の4拍子に戻ると、バス・クラリネットとサクソフォーンによって緩やかな主題が奏でられます。この主題は徐々に盛り上がりを見せ、先行の主題と交錯しながら高らかに鳴り響き、華やかに曲を締めくくります。

「祝典序曲」は、その名の通り、祝典にふさわしい華やかさと力強さを兼ね備えた作品であり、イベールの管弦楽作品の中でも特に人気が高い一曲です。そのダイナミックな展開と色彩豊かなオーケストレーションは、聴く者を魅了し、高揚感を与えます。

参考文献

最新名曲解説全集7　管弦楽曲IV　（音楽之友社）

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