神崎則休

赤穂浪士・神崎則休：酒豪俳人の生涯と最期

神崎則休（かんざき のりやす、1666-1703）は、江戸時代前期に活躍した武士であり、赤穂浪士四十七士の一人として知られています。通称は与五郎、本姓は源氏、家紋は蛇の目です。

幼少期と森家への仕官

則休は美作国津山藩森家家臣の子として生まれました。生母については諸説ありますが、森家家臣の娘であることは確実です。津山藩に仕えていましたが、ある時期に浪人となっています。浪人した時期や理由は諸説あり、確かな情報は残されていません。男色事件に関わったという説や、藩主の寵臣の専横に対する反発から追われたという説などがあります。しかし、元禄6年には既に浅野家に仕官していたことから、減封によるリストラ説は否定できます。

浅野家への仕官と赤穂での生活

浪人後、則休は赤穂藩浅野家に仕官しました。同郷の藩士の仲介があったと推測されています。赤穂藩では徒目付として勤務しましたが、譜代ではない新参のため下級武士でした。しかし、風流人で知られ、俳人としても才能を発揮。「竹平」という俳号を持ち、大高忠雄、萱野重実と共に浅野家中三羽烏と呼ばれたほどです。興味深いことに、『窓のすさみ』には、則休が浅野長矩の乳兄弟であったという記述もあります。

元禄赤穂事件への関与

元禄14年、浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ際には赤穂にいました。大石良雄に血判を提出、赤穂城開城後は那波に居住し、那波十景を詠んだとも伝えられています。その後、病気の岡島常樹に代わり江戸へ下向。扇子売りの商人になりすまし、吉良家の動向を探りました。

討ち入りと最期

吉良邸討ち入りでは表門隊に所属。討ち入り後、水野忠之の中屋敷に預けられましたが、冷遇されたと言われています。切腹は水野家預かりの義士の中で最も最後に行われ、身分が低く扱われたことを示唆する出来事です。元禄16年2月4日、水野家家臣の介錯で切腹しました。享年38。浅野長矩と同じ泉岳寺に葬られ、法名は刃利教剣信士です。「梓弓春近ければ小手の上の雪をも花のふぶきとや見ん」という辞世の句を残しました。

創作された逸話

則休に関する創作された逸話もいくつか存在します。元は百姓で、男色家の男を殺害し、庄屋の養子となり士分になったという話や、東下りの際にヤクザの馬子と遭遇したという話などです。後者の逸話は、大高忠雄の逸話と類似しており、大高の逸話が転化したものと考えられています。

『赤城盟伝』への関与と人物像

則休は前原宗房と共著で『赤城盟伝』を著しました。同書では討ち入り不参加者を厳しく批判しています。扇子屋に扮していたことから美男だったという説もありますが、水野家の記録では怖い顔をしていたと記されています。水野邸が後に襲撃されたため、実際の切腹場所は現在の跡地とは異なる場所である可能性が高いです。

まとめ

神崎則休は、俳人としての才能を持ちながら、激動の時代を生きた武士でした。酒豪として知られ、その生涯は波乱に満ち溢れていました。創作された逸話も存在しますが、歴史的事実に基づいた彼の生き様は、今も人々の心に深く刻まれています。彼の最期は、忠義と厳しい現実の狭間で揺れ動いた、江戸時代の武士の姿を象徴していると言えるでしょう。

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