神戸丸 (東亜海運)

神戸丸：短距離国際航路を彩った高速貨客船

神戸丸は、東亜海運が運航していた高速貨客船です。長崎と上海を結ぶ航路の強化を目的として、三菱重工業長崎造船所で建造されました。その豪華な内装と最新鋭の設備は、当時の人々を魅了しました。

建造と特徴

1939年から1940年にかけて、三菱重工業長崎造船所で建造された神戸丸は、東亜海運が設立後初めて建造した船舶です。もともと日本郵船が計画していた8,000トン級高速貨客船の計画を引き継ぎ、建造されました。

船体は鋼製で、7つの甲板で構成されています。太めの煙突が後方に傾斜して1本備え付けられており、上甲板以下が黒色、上甲板以上が白色に塗装されていました。

主要目

• - 総トン数: 7,930.0トン
• - 満載排水量: 6,930.0トン
• - 全長: 138.5m
• - 型幅: 18.0m
• - 型深: 9.75m
• - 満載喫水: 6.047m

旅客設備

旅客定員は一等149名、三等448名の計597名。各甲板にはエレベーターが設置され、公室や客室には冷暖房装置も完備されていました。照明にも工夫が凝らされ、間接照明を併用するなど、落ち着いた空間が演出されていました。

• - 遊歩甲板: ベランダ付一等喫煙室、一等エントランスホール、特等室、一等客室、一等ラウンジ
• - 船橋楼甲板: 一等大食堂、一等エントランス、一等配膳室、特別室、一等客室、三等エントランスホール、三等喫煙室、三等ベランダ及び遊歩場
• - 上甲板: 一等客室、三等大食堂、三等エントランス、三等娯楽室
• - 第2甲板: 三等客室、大浴場

貨物設備

貨物の最大積載量は1,940トン。船倉には冷蔵貨物倉や、当時としては珍しい自動車格納庫も設けられていました。手荷物用のエレベーターも設置され、迅速な取り扱いが可能でした。

機関部

主機関には「三菱ツェリー全衝動型一段減速歯車装置付並列複式蒸気タービン」が2基搭載されました。また、ボイラーには「三菱三胴型水管缶」が4基搭載され、当時としては国内最高圧・最高温を誇りました。

石炭を自動で供給する「三菱マルティプルレトルト下込ストーカ」が採用され、省力化と無煙化を実現していました。

船歴

1940年10月に竣工し、長崎-上海航路に就航しました。しかし、1942年11月11日、上海から横浜へ向かっていた貨物船「天山丸」と衝突し、沈没。多くの乗客、乗組員が犠牲となりました。

この事故は、戦時中の制限航路内での無灯火航海が原因とされ、両船に不可抗力が認められました。

事故概要

• - 1942年11月10日：長崎港を出港
• - 1942年11月11日午前5時25分：天山丸と衝突、火災発生
• - 1942年11月11日午前6時00分：神戸丸沈没
• - 1942年11月11日午前8時35分：天山丸沈没

参考文献

• - 日本海難防止協会『海と安全』
• - 天然社『船舶』
• - 船舶技術協会『船の科学』
• - 梶尾良太「太平洋戦争前期における日本の戦時遭難船舶と新聞報道」

関連項目

• - 三菱重工業長崎造船所
• - 日華連絡船

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