神秘の森〜ピブロック組曲

ジェスロ・タルのフォークロック三部作の1枚『神秘の森〜ピブロック組曲』

1977年、ジェスロ・タルは10枚目のスタジオアルバム『神秘の森〜ピブロック組曲』(原題: Songs from the Wood)を発表しました。このアルバムは、後の『逞しい馬』(1978年)と『ストームウォッチ〜北海油田の謎』(1979年)と共に、バンドの「フォークロック三部作」として位置付けられています。

しかし、バンドの中心人物であるイアン・アンダーソンは、この作品を単純なフォーク音楽の模倣とは考えていませんでした。彼は後に、「フェアポート・コンヴェンションやスティーライ・スパンといった、1970年代のトラディショナル・フォーク・シーンを代表するアーティストたちの真似をしたわけではない」と語っています。むしろ、プログレッシブ・ロックという枠組みの中に、フォーク的な要素を取り入れた、独自の音楽性を追求したと説明しています。

このアルバム制作にあたり、アンダーソンは大きな葛藤を抱えていました。当時、パンク・ロックが台頭し、ロック音楽の潮流がよりシンプルな方向へと変化していく中で、フォーク色の強いアルバムが受け入れられるか、大きな不安があったようです。しかし、同時に、彼はこの作品に強い自信を持っていました。それは、彼が後にこのアルバムを自身の代表作の一つとして挙げていることからも明らかです。

アルバム収録楽曲の中でも注目すべきは、「緑のジャック」と「至高の鐘」です。「緑のジャック」は、アンダーソンが一人で全パートを演奏した多重録音による楽曲です。一方、「至高の鐘」は冬至をテーマにした楽曲で、アンダーソンはラジオでオンエアされ、シングルチャートにランクインすることを目指して制作したと語っています。この戦略は成功し、「至高の鐘」はシングルカットされ、全英シングルチャートで28位を記録、5年ぶりの全英トップ100入りを果たしました。

『神秘の森〜ピブロック組曲』は、商業的にも大きな成功を収めました。全英アルバムチャートでは12週に渡りトップ100入りし、最高位13位を記録しました。アメリカでは、Billboard 200で8位にランクインし、7作目の全米トップ10アルバムとなりました。さらに、シングル「森の笛吹き」もBillboard Hot 100で59位に達しました。

批評家からの評価も高く、オールミュージックのBruce Ederは5点満点中4点を付け、「フォーク色の強いジェスロ・タルの楽曲を好む人々にとって、特別な御馳走である」と絶賛しました。また、和久井光司は再発盤のライナーノーツで、このアルバムを「大人が聴くに値するロック」と評し、アンダーソンのルーツ回帰の試みが高く評価されました。Ultimate Classic RockのEduardo Rivadaviaは、ジェスロ・タルのアルバムランキングにおいて、本作を『アクアラング』、『ジェラルドの汚れなき世界』に次ぐ3位にランクインさせ、「牧歌的なテーマと原生林への回帰」を高く評価しています。

『神秘の森〜ピブロック組曲』は、フルート、アコースティックギター、マンドリン、ホイッスルなど'>[ジェスロ・タル]]の音楽性における重要な転換期を示す作品であり、商業的成功と高い評価の両方を獲得した、彼らの代表作の一つと言えるでしょう。 アルバムには「大いなる森」「緑のジャック」「カップ一杯の不思議〜クリムゾン・ワンダー」「女狩人」「至高の鐘」「優しい緑」「森の笛吹き」「ピブロック組曲」「真夜中の灯」の9曲が収録されており、2003年のリマスターCDにはボーナス・トラックとして「ベルテイン」とライブヴァージョン「優しい緑（ライヴ）」が追加収録されました。 メンバーはイアン・アンダーソン]、マーティン・バー(エレクトリックギター、[[リュート)、ジョン・エヴァン(ピアノ、シンセサイザー、オルガン)、ジョン・グラスコック(ベース、バッキングボーカル)、バリモア・バーロウ(ドラムス、マリンバ、グロッケンシュピール、ベル、パーカッション)、デヴィッド・パーマー(ピアノ、シンセサイザー、オルガンなど)といった面々です。

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