神聖隊

神聖隊：愛と勇気の精鋭部隊

神聖隊（ヒエロス・ロコス）は、紀元前378年にテーバイの将軍ゴルギダスによって結成された、古代ギリシアの精鋭歩兵部隊です。ギリシア最強と謳われた彼らは、国費で養われ、日々の訓練に明け暮れていました。

恋人同士の絆

神聖隊の最大の特徴は、150組300名の男性の恋人同士によって編成されていた点です。この独特な編成には、戦場で互いに醜態を晒すまいと勇敢に振る舞い、愛する者を守るために奮戦するという意図があったと考えられています。愛する人のためならば、人はより強く、勇敢になれる。神聖隊は、そのことを体現した部隊だったと言えるでしょう。

テーバイの覇権を支えた勇士たち

神聖隊は、スパルタを破ったレウクトラの戦いなどで活躍し、紀元前4世紀のテーバイのギリシアにおける覇権確立に大きく貢献しました。彼らの存在は、テーバイ軍の士気を高め、数々の勝利をもたらしたのです。

テーバイはエリスと並び、古代ギリシアにおいて男色文化が盛んな都市でした。テーバイが位置するボイオチア地方では、少年愛で知られるヘラクレス崇拝が盛んであり、アリストテレスの著作には、ヘラクレスの甥であり愛人でもあったイオラウスの墓所が、テーバイの同性愛者カップルが愛を誓い合う場所として利用されていたという記述があります。プルタルコスは、「神聖隊」の名称はこの風習に由来すると考えました。

カイロネイアの戦いと神聖隊の終焉

テーバイがギリシアの覇権を失った後も、神聖隊は存続していましたが、紀元前338年のカイロネイアの戦いで、マケドニア王子アレクサンドロス（後のアレクサンドロス大王）率いる騎兵部隊との激戦で壊滅的な打撃を受けます。この戦いで254人が戦死し、神聖隊は事実上解散しました。

カイロネイアで勝利したマケドニア王ピリッポス2世は、神聖隊の兵士たちの亡骸を見て涙を流し、その勇敢さを讃えたと言われています。敵であるマケドニアの王をも感動させた彼らの勇姿は、後世に語り継がれることとなりました。

後世への影響

近代以降、ギリシア陸軍において何度か編成された精鋭部隊「神聖中隊」という隊名は、この神聖隊の名に由来しています。古代の英雄たちの魂は、現代のギリシア軍にも受け継がれているのです。

参考文献

• - 市川定春 『古代ギリシア人の戦争・会戦事典: 800BC-200BC』 新紀元社、2003年、ISBN 4-7753-0113-6。

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