紀元前338年

紀元前338年：世界を揺るがした出来事の年

紀元前338年は、古代世界において数々の重要な出来事が発生した年として歴史に刻まれています。ローマ、ギリシャ、ペルシア、そして中国など、各地で政治的・軍事的な変動が激しく、後の世界史に大きな影響を与える出来事が多発しました。

ペルシア帝国：王位継承と陰謀

ペルシア帝国では、アケメネス朝10代目の王アルタクセルクセス3世が、宦官のバゴアスによって暗殺されました。バゴアスは、王の寵愛を失ったことにより、アルタクセルクセス3世の若い息子アルセスを擁立し、傀儡として支配しようとしました。アルタクセルクセス3世と他の皇子たちが殺害され、アルセスはアルタクセルクセス4世として即位するも、バゴアスの操り人形に過ぎませんでした。この王位争いは、帝国内部の権力闘争の激しさを示す象徴的な出来事となりました。

ギリシャ：マケドニアの台頭とアテナイの苦悩

ギリシャでは、マケドニア王ピリッポス2世が、カイロネイアの戦いでアテナイとテーバイの連合軍を破り、ギリシャにおける覇権を確立しました。この戦いは、ピリッポス2世の息子アレクサンドロス3世（後のアレクサンドロス大王）も参加しており、彼の軍事才能が示された重要な戦いでもあります。勝利後、ピリッポス2世はテーバイを厳しく処罰する一方、アテナイに対しては比較的寛大な対応を取りました。これは、アテナイの雄弁家デマデスの尽力による和平交渉の結果によるものです。

ピリッポス2世はその後、ペロポネソス半島に進出し、スパルタを制圧、コリントスでコリントス同盟を結成しました。これにより、マケドニアはギリシャ全土に影響力を持つ強大な勢力となりました。アテナイでは、優れた政治家リュクルゴスが国家財政の改革を行い、歳入を倍増させることに成功しました。一方、スパルタ王アルキダモス3世は南イタリア遠征中に戦死し、跡を息子アギス3世が継承しました。

シチリア：カルタゴとシラクサの戦い

シチリア島では、カルタゴとシラクサの間の戦闘が続いていました。カルタゴはシチリア全土の征服を目指していましたが、シラクサのティモレオンの活躍により、カルタゴの勢力はハリクス川（現在のプラータニ川）の西側に制限されました。ティモレオンはシチリアの僭主を倒した後、自ら引退しました。

共和政ローマ：ラティウム戦争の終結

イタリア半島では、ローマがラティウム同盟との戦争に勝利しました。ラティウム同盟の解体後、多くの都市がローマに組み込まれ、ローマの影響力は拡大しました。ローマは、敗北した同盟国に対しても寛大な政策を取り、多くの都市住民に市民権を与えました。これにより、ローマは敵を味方にするという巧みな外交戦略を示しました。ウォルスキ族もローマへの抵抗を放棄し、同盟を結びました。

中国：秦の孝公の死と商鞅の処刑

中国では、秦の孝公が死去し、恵文王が即位しました。孝公の時代に活躍した改革者商鞅は、謀反の疑いをかけられ、処刑されました。商鞅は秦の法治主義的な改革を推進した人物として知られており、その死は、秦の政治情勢の変化を象徴する出来事となりました。

その他

この年には、ギリシャの修辞学者イソクラテス、そして哲学者ヒケタスが亡くなりました。

紀元前338年は、古代世界の様々な地域で、政治的、軍事的な転換期であったことがわかります。これらの出来事は、その後何世紀にもわたる世界史に大きな影響を与えました。

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